魅了なんて、オレには効かない

クリヤ

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第3章 王子の出自と追放された姫

(6)アントンの秘密とニセモノのローブ

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 王宮の中は、幾何学模様が美しいタイルが貼られている。
 じゅうたんの模様も似たような色とりどりのもの。
 前国王とハンナ王の叔父の服装も、異国情緒にあふれている。
 ゆったりとした布をたっぷりと使った衣服。
 肩から斜めにかけられたビロードの布が、優雅さを漂わせている。

 「さぁ、こちらへ。お茶にしよう」
 「はい。ありがとうございます」

 案内されたのは、小さめの部屋。
 じゅうたんが敷かれた部屋に、クッションがたくさん。
 大きいものから小さめなものまで、どれも美しい刺繍がされている。

 「ソファがなくて、驚いたかな?」
 「え、ええ。室内で靴を脱ぐのにも驚きました」
 「ははは。最初は、そうだろう。わたしもそうだった。
  今は、むしろ、こちらのほうが快適でね」

 アントンの真似をして、ふたりは、じゅうたんの上に座る。
 まもなく、アウグストが銀色のお盆を持って現れた。
 それを見たティムが、あわてて立ち上がろうとする。
 それを目線で制したアウグストは、お盆を皆の真ん中に置く。

 「陛下自ら、ありがとうございます」
 「はは。我は、もう国王ではない。アウグストと呼んでくれ」
 「はい。では、そうさせていただきます」
 「うん。変わった建物だろう? 我は、これが好きでね。
  くつろげる衣服も足がダルくならない床での茶会もいいものだ」
 「わたしたちも野営が多い旅をしてきましたから。
  珍しさもありながら、なじみもあります」
 「はっはっは。若い者は、そのくらい柔軟であって欲しいものだ」

 アウグストが、手ずから茶を淹れてくれる。
 いくつかのハーブの香りが混じり合った熱いお茶がカップに注がれる。
 その香りは、皆を穏やかな気持ちにさせる。
 
 「これは、異国の菓子だ。我は、この干した果実が気に入っている」

 アウグストに勧められて、王子とティムは茶と菓子を口にする。
 ハーブの茶に合う干した果実と小麦粉で作られた菓子。
 花のような香りもして、独特な味わい。
 行ったこともない異国にいるような気分になる。

 「あなたがたは、我が故郷のゾンネンバウムを救ってくれたのか。
  それは、ハンナが感謝するわけだ。
  我からも礼を言わなければ。本当にありがとう」
 「いえ、わたしたちこそ、ハンナ王にはよくしていただきました」

 王子とティムが、アウグストとお茶を飲んでいる間。
 アントンは、グリュンからの手紙を読み終えていたようだ。

 「本当に、あなたは初代のルイ王に似ている。
  ハンナが、生まれ変わりだと思うのも無理はない」
 「そうですか」
 「グリュンの伝説の宝も取り戻してくれたとか?」
 「ええ。偶然のようなものですが」
 「我がゴルトの宝も消えてしまって、もうどれくらいになるのか……」

 アウグストが、遠い目をする。
 伝説の宝のことを直接、知っているようだ。 

 「あの……、アウグスト様。ゴルトの宝を目にされたことは?」
 「もちろん、ある。というより……」
 「アウグスト、あなたのせいではないでしょう?」
 「そうは言っても、アントン。本当に、我に落ち度がないと言えるのか……」
 「どういう意味です?」
 「あの宝が盗まれたのは、我が王だった時。
  すなわち、国宝を守れなかった責任は我にある」

 王子がティムに目配せをすると、ティムはアイテムバッグを開ける。

 「これを見ていただけませんか?」
 「なんだい? 我に分かるといいが」

 ティムがそれを取り出して、アウグストの前に置く。
 それを認識した途端に、アウグストの目が大きく見開かれる。

 「これは……」
 「ゴルトの伝説の宝『稲妻のヘルム』では、ないですか?」
 「そ、そうだ。これは、忘れもしない。我が国の宝。これをどこで?」
 「ここからほど近い山の中です。白い馬にかぶせられていました」
 「白い馬? ここへ乗ってきた馬のことかい?」
 「はい。あの馬をご存知でしたか?」
 「国王時代の愛馬の一頭に似ていたが、そうならば我に気づかぬはずは……」
 「すみません。ミノタウロスと戦うほどの気性だったので」
 「何か、魔法でも使ったか?」
 「いえ、グリュンでいただいたモントツッカーを少し」
 「はっはっは。そうか、そうか。あやつは、クマをも恐れぬ性格でな」
 「そのようですね」
 「うん。確かに、伝説の宝が消えた頃に、あやつもいなくなったが。
  まさか、一緒に見つかるとは」
 「アウグスト、ここ最近よく聞いたユニコーンのウワサは、もしや」
 「そうか。そういうことか。アントン、きっとそうに違いない」
 「ユニコーンのウワサが?」
 「うん。山中で、ユニコーンを見たという猟師がいてな。
  けれど、ユニコーンは幻の存在。何かと見間違えたんだろうと」
 「そう思われるのも当然です。実際に見たわたしたちも、そう思いました」
 「猟師の話をちゃんと聞いて、調べてみるべきだった。
  やはり、我は詰めが甘い」
 「そんなことは、ありません。あなたは、いつだって懸命だった」
 「アントン……。おまえは、我に甘すぎる」
 「アウグスト。愛するあなたの味方でいなくて、配偶者と言えましょうか?」
 「ふふ。おまえの存在は、本当に我の心の支えだ」

 アウグストとアントンが見つめ合い、互いに褒めあう。
 王子は、その姿を眩しそうな表情で見ている。

 「あなたは、本当に運に恵まれているようだ。
  グリュンに続き、我が国の宝までも見つけてしまうとは」
 「そうかも知れません。ここまで来られたのも、運のようなもの」
 「どういう意味だ?」

 アウグストの質問には答えずに、王子がアウグストにヘルムを渡す。

 「これは、ゴルトの国にお戻しします。もちろん、馬も」
 「なにっ? 宝は、見つけた者に所有権が発生する。
  そんなに簡単に渡してしまって、いいのか?」
 「ええ。ただ、お願いがふたつほど」
 「なんだ?」
 「その前に、わたしの本当の身分を明らかにさせてください」
 「ああ、それはもちろん。
  ハンナからは、ぜひ助力をと書かれていたらしいのでな」
 「ありがとうございます。わたしは、ルートヴィッヒ。
  当代の王都の王子です」
 「……王子が、カッツェンだと聞いたことはないが?」
 「ええ。これは、父も知らない秘密です」
 「そういえば、王妃様はブラオ出身でしたな」
 「はい」
 「それならば、納得がいきます」
 「どういう意味だ、アントン?」
 「ブラオとグリュンは、王族が結婚することが多いのです。
  距離が近く、親戚が多いですから。
  グリュンには、知っての通り、カッツェンの血を受け継ぐ者が」
 「そういうことか。変身するのだな?」
 「はい。よくご存知ですね」
 「アントン、おまえのことも、打ち明けていいか?」
 「ええ。こちらだけ秘密というわけにもいかないでしょう」

 そういうと、アントンは耳を隠している栗色の髪をかきあげた。
 そして、王子がしているのと似たピアスを外す。
 緑色のモヤとともに、その姿が見えなくなる。
 モヤが消えると、そこには栗色の毛並みのカッツェンがいた。

 「まさか、アントン様も!」
 「そうだ。美しいだろう? 実は、我はこの姿にひと目惚れしてな」
 「アウグスト、若い人の前で恥ずかしいですよ」
 「何を恥ずかしがる。おまえは、今も美しい」
 「ええ。本当に、お美しい」
 「ふふ。ありがとう。
  こういうわけですから、秘密のことはご心配なく」

 アウグストは、アントンを自分のほうに引き寄せる。
 そして、ひざの上にのせて話を続ける。
 王子は、王都で起きた大規模な魅了魔法のことや姫たちのことを話す。

 「うん。王都で何か起きたらしいというのは聞いていたが。
  我が国では、特段、何も起きてはいない。
  当代の王は、我よりも商売熱心でな。
  商売に関わらないことには、あまり興味がないのだよ」
 「花嫁候補になった姫のことは、ご存知ですか?」
 「もちろん。我らの孫にあたるからな」
 「どのようなかたなのです?」
 「おとなしくて、本ばかり読んでいる。
  特に、最近では、異国の本ばかりを集めているらしい」

 グリュンの姫から聞いた話に間違いはないようだ。

 「わたしたちは、何度も金色のローブを着た者に襲われました」
 「なんだって? 金色のローブというのは、まさか」
 「はい。表にいた衛兵のものとよく似ています」
 「それを持っていないのか?」
 「ティム、どうだ?」
 「はい。一着だけ、念のため、残しておきました」
 「見せてくれ」

 ティムが、アイテムバッグから金色のローブを取り出す。
 最初に襲われた時に、はぎ取っておいたものだった。

 「……うん。よく似ているが、我が国のお仕着せではないな」
 「そうなのですか?」
 「我が国のものならば、すべてに番号が刺繍されている」
 「どちらに?」
 「内側の目立たないところだ。番号は国が控えている」
 「なぜ、そんなことを?」
 「紛失したり、仮に任務中に命を落としても。
  必ず、家に戻れるようになっているんだ」
 「それでは、こちらは?」
 「我が国のものに見せかけたニセモノだろう」


 ***

 ハンナ王の叔父さんの住む王宮に来てから、ビックリすることばかり。
 王宮の中は、ホントに異国風で。
 タイルやらじゅうたんやらが、すげぇキレイ。

 靴を脱いで、床に座るってのもイイ!
 オレにとっては、そっちのほうがむしろ普通。
 盆にのせた菓子と茶を見てさ、この世界に来る前を思い出しちゃったよ。

 ゲームする時は、部屋に菓子とジュースを持ち込んで。
 ガッツリ攻略。
 床に座って、画面を見続けたら首と腰がよく死んだっけ。
 ケツの感覚もなくなったりしたわ。
 なんだか、すでに懐かしい。

 それで、と。
 今回も王子は、伝説の宝をパッと渡しちゃう。
 もうちょっと、もったいぶってもイイんじゃね?
 なんかの取り引きにガッツリ使ってもイイだろ。
 とか、オレ的には思うけども。
 ま、そこが王子のいいところだよなぁ。

 今回、いちばん驚いたのは、アントンでしょ!
 王子と同じで変身できる系の人!
 しかも、アウグストはカッツェン姿に惚れたんだってさ。
 分かってるねぇ! 『同志よ!』って言いたくなったっつーの!
 やっぱり、キレイなカッツェンに惚れちゃうのはオレだけじゃない。
 栗色の毛並みもイイねぇ。
 ツヤツヤでピカピカしててさ。
 なでてみてぇ!
 絶対、無理だけど。

 それで、今でもベタ惚れってわけですね。
 アウグストは、ずっとアントンにベタベタしてるからね!
 それを見せつけられちゃうと、オレも手がウズウズする。
 王子を抱き寄せたくて。
 それで、なんならキスをして。もちろん、その先も!
 ……けど、ここは立場的にガマン。
 良き従者ティムでいなくちゃな。

 それで、と。
 困ったのは、金色のローブ問題。
 これは、大きな手がかりだと思っていたのに!
 アウグストの見立てでは、このローブはニセモノだって。

 ってことは、暗殺者たちはゴルトのやつじゃない?
 じゃあ、どこのどいつなんだよっ!
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