すべてを風のせいにして 〜タイムループバタフライ〜

クリヤ

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 「リコ、ちょっとごめん。誤解があるみたい」
 「誤解? 誤解なんかじゃないわ!」
 「ママ、大丈夫?」
 「うん。悪いけど、ふたりで話させてもらえる?」
 「それは、構わないけど……」

 とりあえずは、カンちゃんに落ち着いてもらわないと。
 ホテル内のレストランで良かったよ~!
 カフェの個室を用意してもらえたから。
 あたしは、手土産のつもりだった紙袋を持ってカフェへ向かう。
 中には、カンちゃん好物のアレが入ってる。
 シュンスケ! まぢで感謝!
 好物は、こんなとこでも役に立つ!

 「カンちゃん、こっちにきて」

 カンちゃんは怒りながらも、一応、ついてきてくれる。
 ふぅ~! 良かった。
 娘の大事な日をめちゃくちゃにしたくないからね。
 ちょっと、『めちゃ』くらいにはなりかけてるけど。

 「紅茶、飲んで」
 「うん」
 「これ、食べて」
 「え? あんドーナツ? 憶えてたの?」
 「なんで? 忘れるはずないじゃん」
 「それじゃあ、……それじゃ、どうして?」
 「え? なにが?」
 「だから、あの時、どうして一緒にきてくれなかったの?」
 「え? でも……」
 「いつもいつも、私から奪うのはなんで!」
 「奪ってなんか……」
 「そうやって、落ち着いて。私をバカにしてるんでしょ!」

 カンちゃんの言ってること。
 ほとんど分からない。
 一緒に? 奪う? バカにする?
 一体、なんのことなんだろう???

 「カンちゃん、あたしが何かしちゃったんだよね?」
 「……心当たりがないの?」
 「ごめん。全然、分からない」
 「いつもそう……」
 「え? なに?」
 「あなたは、いつもそうなの!」
 「なにが? なにがそうなの?」

 どうにか言葉にしてくれないかなぁ?
 申し訳ないけど、さっぱりだよ……。

 「そもそも、それ!」
 「え? どれ?」
 「まずは、あんドーナツよ!」
 「へ? あんドーナツ?」

 ここに来て、あんドーナツが問題なの?
 んんんんん? どーいうこと?

 「わたしは、ここのあんドーナツが大好きなの!」
 「うん、知ってるよ?」
 「だから、みんなにも食べてほしくて」
 「うん、うん」
 「バイト代が入った時なんかは、学校に持っていってた」
 「へぇ。知らなかった」
 「あなたは、いつもそう!」

 え? そうって? また怒ってるし……。

 「ごめん、続けてください」
 「だけど、全員分はムリだったの」
 「うん、そうだよね」
 「だけど、あなたはクラス全員分を持ってきた!」

 あ、あれかぁ~。
 だって、それはカンちゃんと仲良くなるための。
 言えないけど、シュンスケのための。
 一回きりの大盤振る舞いだったからね。
 え? それが問題なの?

 「あ~、あれは、たまたま。たくさんもらったから~」
 「あなたは、それでいいかも知れないけど!」
 「それが迷惑だったの?」
 「あとで、ほかの子から言われたの」
 「なにを?」
 「『誰かさんと違って、みんなにくれるの、さすがだよね』って」
 「え? どういうこと?」
 「だから、教室で仲のいい子にだけ配ってるわたしをさ」
 「うん」
 「苦々しく思ってた子たちがいたってこと!」

 まぢか! そんな子いたのか~。
 全然憶えてないし。
 それは、あたしのせいなのかなぁ?
 そいつらのせいじゃね?
 まぁ、でもここは穏便に? かな?

 「そっか、ごめん。悪いことしたね」

 「それ! それもムカつくのよ!」
 「え? 謝るのが?」
 「簡単に謝ることがよ!」
 「まぢか~」
 「ここは穏便に済ませようって感じが出てるのよ!」

 ドキッ! まずい。バレてる……。

 「ははは……。そんなことは……」
 「あるでしょ! あなたにとって、どうでもいいのよね!」
 「どうでもよくは……」
 「ウソ! さっきだって『知らなかった』って言ったじゃない」
 「だって、知らなかったから……」
 「他人に興味がないくせに、他人の気を引くのは上手」
 「……う~ん」

 そう思われてたのか~!
 上手かどうかは知らんけど、他人に興味がないのはホントかも?
 でも、興味持てってのも変じゃね?

 「それに大学! なんで一緒に来なかったの?」
 「いやぁ。あたしは地元でいいかなって」
 「でも、わたしより勉強できてたし先生にも勧められてた」
 「うん。でも……」
 「でも、じゃない! わたしはひとりで辛かったの!」
 「え? そうだったの?」

 だって、あれはチートみたいなもんだったし。
 言えないけどさ。
 ひとりで辛いのも、あたしのせいなんかい?
 うむむむ、それも込み込みで遠くの大学に行くんじゃね?
 たしかに、1回目の人生じゃひとり暮らしは大変だったけど。

 「授業にバイトにサークルに追われて、ひとりで頑張ってさぁ」
 「うん、うん」
 「いざ就活したら、不況とかでいい会社には入れない」
 「そうだったね、あの頃は」
 「あなたに会いたくなって、地元に帰ったら」
 「え? いつ?」
 「黙って聞いて!」
 「はい……」
 「あなたは楽な大学にいって、友だちと楽しそうだった」
 「声かけてくれれば……」
 「そんな惨めなことできない!」

 まぢか~! 会いにきてたんだ、カンちゃん。
 だけど、ここまでの『あたしのせい』ってやつ。
 ホントにそうなの?
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