すべてを風のせいにして 〜タイムループバタフライ〜

クリヤ

文字の大きさ
19 / 21

(19)本当のシュンスケ

しおりを挟む
 「ボクは、生まれたくないんです」

 ハッキリ言えと言った手前、必死に隠したけれど。
 心臓が止まるんじゃないかと思うようなことを聞かされた。
 生まれたくない?
 そんなひどい言葉。
 目の前のかわいい孫から発せられたことが信じられない。

 「オーマの言葉を借りれば」
 「うん」
 「もう、終わりにしたいんです」

 え? 死にたいってこと? 終わりにしたい?
 ループしてるわけでもないのに?

 「信じてもらえるか、分かりませんが」
 「信じるよ! どんな話でもね!」
 「ありがとうございます」
 「うん。だから、一緒に考えよう?」
 「ボクには、改めて考えることはないのですが」
 「そう、なんだ?」

 なぜだか、すべてを打ち明けると決めたシュンスケ。
 今まで会ったどのシュンスケとも違う雰囲気。
 なんでだろう?
 孫っていう親近感みたいなものが消えた?
 そんな気がしちゃう。
 知らない大人といるみたい。

 「ボクには、幼い頃から自分に対する違和感がありました」
 「自分への?」
 「はい。ここにいるようで、いない気がする」
 「うん?」
 「両親を含め、すべての人に親しみが持てない」
 「……どういう意味?」
 「頭では分かっていても、他人としか思えないんです」
 「……なるほど」
 「生きている人とも思えないこともあります」
 「それは、どういう?」
 「目の前なのに、画面の向こう側のように見えたり」
 「ああ、そういうこと」
 「人生が劇のようで、ただ役を演じているだけ」
 「嘘っぽいってことかな?」
 「まぁ、近いかも知れません」

 まぢか~! 今までの対処がすべてムダだったわけだよ!
 これって、どういう状態?
 病気? なのかな?

 「敬語を使う理由も、同じ?」
 「そうです。見知らぬ人に話す時を考えていただければ」

 見知らぬ人って!
 生まれた時からいる親とかばあちゃんじゃん!

 「どんなことも心から楽しんだことはないです」 
 「そうなの⁉︎」
 「本音を言ったこともないんです」
 「今は本音だよね?」
 「ああ、そうですね。生まれて初めてかも知れません」

 素直に認めるとこは、あたしが知ってるシュンスケなんだけど……。
 話せば話すほど、遠ざかっていくようで怖い。

 「ボクには、人が望むことや望む言葉が分かるんです」
 「そっか。合わせられるってことか」
 「はい。次に何を言うかもだいたい分かります」
 「それは……つまんないかも」
 「ええ。でも、そうやって生きてきましたから」
 「誰かに相談したことは?」
 「もちろん、ありません」
 「リコたちが、なにかしたの? それともほかに?」
 「いえ。両親はとてもいい人たちです」
 「それじゃあ……」
 「だから、問題なんです」

 どう問題なの⁉︎
 めっちゃ深刻っぽくなってきちゃったじゃん!
 こんなはずじゃなかったのに~!

 「なにかされたのなら、そのトラウマとも考えられます」
 「うん」
 「けれど、彼らは良き親です。一般よりもいいくらい」
 「そう……」
 「なのに、ボクは消えたいと思っているんです」
 「そっか」
 「ここにいるべきじゃない気が、ずっとしたままなんです」

 正直、この話は辛い。
 もし親だったら、自分を否定されたような気持ちになるかも。
 そっか。
 だから、シュンスケは誰にも言えないんだね。

 「自分で消えることも考えました」
 「うん……」
 「だけど、命を絶ったところで体は残り、記憶にも残ります」
 「そうだね、もちろん」
 「それは、ボクが望む消えかたではないんです」
 「なるほど?」
 「ボクという存在丸ごと消さなければ、と思っているんです」

 誰かの記憶にも残りたくない?
 存在した、っていう事実さえも残したくないってことか。
 それは、かなり難しくね?

 だって、この世に生まれてしまえばさぁ。
 そういうわけにも……。
 え? この世に生まれてしまえば?
 そこ? そこだったの?
 
 親のところじゃなくてさ。
 わざわざあたしのところに、現れるわけって。
 そこ? ちゃんと完璧に消したいってわけか……。

 ようやく、すべてが腑に落ちた。
 やるべきことも分かった。
 ループさせているのは、シュンスケの思い。
 ループは、これで止められる。
 けど……。
 実行するかは悩ましい。
 ループしていて初めての悩み。
 どうしよう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...