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本編
家族会議とその行方【3】
しおりを挟む「……いや、無理だろ。それは」
ルクスにしては珍しく非現実的なセリフに、おれは少し驚いた。
いや、おれら以外に誰が継ぐんだよ。
あのド変態の兄弟はみんな死んじまったし、弟妹も一向に生まれてくる気配がない。おれは密かに変態がヤりすぎて不能になった説を疑っている。
おれ達が継承権を放棄するだなんて周りが許すはずないし、だいたいあの頭がイカれた皇帝が一度口に出した命令を覆すはずがない。
「なら、こんな国捨ててしまえば良いだろう」
「は?」
「移住先の候補としては、隣の大陸にあるダミア王国とテマノス公国を考えているのだが」
「え」
「シレノスは昔から海が好きだったろう?近くに家を建てて、そこで一緒に暮らせばいい。今のところ50年は遊んで暮らせるほどの蓄えはあるが、もし貯蓄が不安ならば冒険者でもするか。隣の大陸にはギルドというものがあってだな」
「ちょ、待って。ルペルクスさん」
「なんだ」
「やけに計画的じゃありません……?」
どう聞いても、昨日今日で思いついた話じゃない。何故移住先の候補が既に2つに絞られてるんだ。絞る前におれに見せろ。ってそうじゃなくて!
「ああ。もう随分前からこうするつもりだったからな。予定が早まっただけだ」
「はあ!?なんでだよ!言えよ!おれを置いてく気だったんじゃねぇだろうな!?泣くぞ!?」
「阿呆か。お前と一緒になれないなら移住する意味がないだろう」
よし。ならいいだろう。その国メシと酒は美味いんだろうな。
「あ、そう……つか、そういう大事なことは早く言えよ。お前時々そういうとこあるよな。おれの誕生日プレゼント買いに1人で王都行ったりさ」
こいつとおれの誕生日は3日違いなので、お互いプレゼントは交換で渡すようにしている。
あれはまだ8歳の誕生日。
おれはこいつの為に一生懸命七面鳥を焼いたのだが、こいつはなんと、1人でお忍びで王都に降りた上に酒場で1日アルバイトをし、その金でおれの好物のミートパイを買ってきたのだ。8歳児とは思えない行動力である。
「悪い。お前馬鹿……隠し事できないし」
「せめて誤魔化す努力をしろ。まあ、いいや。で?なんでその二つなわけ?」
お前、喧嘩売ってるよな?
大して悪く思ってなさそうな声音でさらっとディスられたが、今は胸ぐら掴んでる場合ではない。
寛大な心でそれを流したおれは、次の言葉を聞いた瞬間、今度こそ言葉を失った。
「ああ。この二つは、異母兄弟でも婚姻ができる国だからな」
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