復讐のナイトメア〜伝承

はれのいち

文字の大きさ
9 / 24

ep8  救出

しおりを挟む
 甲馬が向った先は、彼が以前住んでいた家に隣接している集会所であった。

「恐らくこの集会所の地下にある改心部屋に間違いなく夏娘はいる」

 甲馬は、辺りをきにしながら自分の背丈より高い塀をいとも簡単に乗り越えた。

 その姿をみてニヤリと笑みを浮かべナイトメアは呟いた。「へえ……甲馬、中々やるじゃねえか」
 
「ええ、昔は良くここを抜け出して遊びに行ってましたから。ここの裏口から入れます」

 甲馬は得意気に話しながら扉のノブに手をかけ中へ入ろうとした。だがしかし『畜生、鍵がかかってやがる』甲馬は扉に両手をついて俯いた。

 『案ずるな、俺に任せろ甲馬』と甲馬の耳元で囁やきながら肩を軽く叩き、彼をその場に残してナイトメアは扉をすり抜け建物の中へと消えていった。

『待ってよナイトメア!』

――ヤバイひとりになってしまった。

 今にも飛び出てきそうな甲馬の心臓音が静寂の空気を揺らす。

 すると数十秒後、中の方から『ガッチャ』という解錠音が響いた。

『いいぞ開けてみろ甲馬』と呟きナイトメアは扉をすり抜け、扉をじっと見つめる甲馬の前にひょっこりと顔だけ出した。

『うわぁーー』腰を抜かしたリスのようにその場に尻もちをつく甲馬。


『おいおい二代目ナイトメアは随分とチキンな野郎だな』とナイトメアはボソボソと口ずさむ。


『もうビックリするじゃないかナイトメア』とぶつぶつと言いながら、甲馬は小刻みに震える手で、恐る恐る扉を開け建物の中へ入り、一目散に夏娘が監禁されているであろう改心部屋に向った。

 だがしかしチンピラの仲間とおもわれる厳つい男二人が、地下にある改心部屋前で見張りをしている。

『畜生……』甲馬は怖じけつき二の足を踏む。

『さあ、どうするんだ甲馬』とナイトメアは中々、行動に移さない甲馬に苛立ちを覚え、彼の襟元を掴み言い放つのであった。

「俺が何とかしてやる。だから俺に、お前の体を貸すんだ! 迷ってる暇はねえはずだ甲馬」

甲馬は両膝を床につけ俯きながら頼んだ。

「お願いだ……夏娘を助けてナイトメア」

「あゝ任せろ秒殺でボコボコにしてやる」

 そう告げるとナイトメアは、甲馬に重なるようにして彼の体に入っていった。

「うーん久々だぜ。この感じ、やっぱ生身の体は最高だね。どうだ甲馬、力みなぎってきたか?」

 甲馬の想像では体が乗っ取られる、いわゆる憑依状態だと思っていたが違っていた。

「すごいよナイトメア……自分だけど自分じゃないみたいだ」


「そうだろ……後は俺に身を任せろ、ケンカの仕方教えてやるよ」


そう言い放ち、甲馬の体に入ったナイトメアは、いきなり地下入口にいる男ふたりに『おい兄ちゃん!』と叫びながら飛び降りた。
 

 

 
 
 





 

 
 


 

 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...