アストロノミー~星火燎原~

リオン・アルバーン

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21等星・治療

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サルース先生に診てもらい、怪我は全て塞がり痕も残っていなかった。
俺っちの腕も綺麗にくっついていた。

「腕回せる?」

「んっ、ちょっと違和感があるけど、大丈夫です」

それならよかったわと言い、医療道具を片付ける。
ありがとう、サルース先生と明るく言うと、手が止まった。

「先生?」

「何でもないわ、本当に皆よく頑張ったわね」

今まであったことを話すと、サルース先生は驚いていた。
それを余所にオリオンは柔軟して、ベッドから下りた。
少しふらついて、英理空の胸に倒れる。

「大丈夫か!」

「済まない」

「おいおい、無茶するな」

他の奴も休んでいるし、安静にしていろと言う。
オリオンは少し体を動かしたいと返すと、英理空が抱える。

「英理空、何をする」

「今は安静するのが大事だ!」

また泣きそうな声で言う、それにオリオンは間を空けて分かったと答えた。
サルース先生が駆け寄る。

「五角君、ずっと2人を心配していたのよ。無理しちゃ駄目、心配してくれるお友達がいるのだから」

「…英理空、済まない」

「次に無理をしたら俺が守る」

頼もしいなと言うオリオン、英理空は任せろ!と言いベッドに寝かせる。
しばらくして安心したのかオリオンは眠った。サルース先生は今日はここで寝ていいわと言って保健室を出て行った。
俺っちは英理空の元に行き、礼を言った。

「ありがとな、英理空」

「本当にっ、心配したんだ」

次は無理しないでくれと静かなトーンで話す英理空。
俺っちは分かった、それとその喋り方、どうにかならねぇのかと聞くと。

「母様が静かに喋ろとおっしゃる時があるが、羽白たちと居ると嬉しくなって」

声が大きくなる!と言う英理空。
どっちが本当のお前なんだよと言えば、オリオンにはどっちも俺の個性と言ってくれたと答える。

「でも、俺もたまに思うんだ。どうすればいいんだろうって」

「お前なぁ」

「だからこのオリンピアで俺自身を出し切ろうと思う、手を貸してくれないか」

なんだよ、ちゃんと考えてんじゃねぇかと心の中で思い、分かったと返すと
英理空がありがとう!羽白!と言って抱き締めてきた、骨が折れそうで、頼むから加減をしてくれと言った。

_______

翌日、俺っちたちはサルース先生に診てもらい、保健室を出る前に礼を言った。

「先生、ありがとう!」

「ありがとうございます!」

「…」

「気を付けてね」

俺っちと英理空は言ったのに、オリオンは何も言わなかった。
サルース先生が悲しそうな顔をした時。

「先生、また・・来ます」

「!…えぇ、待ってるわ」

「行くぞ、羽白、英理空」

そう言って保健室を出て行った、オリオン。
前のことを思って言ったのだろう、素直じゃねぇなと溜息をつく。

「ったく…先生、また来るから」

「怪我したら来ます!」

なんてことを俺っちと英理空は言って保健室を出て行った。
サルース先生は気を付けてね!と大きい声で返してくれた。
俺っちと英理空がはい!と返事した。

外に出ると周りは自然や遺跡などに囲まれていた、歩いているとあの男が現れた。
ゼウスの側近の男。

「お久しぶりです、お嬢様」

「お前は確か、ゼウスの隣に居たヘルメット」

「ヘルメスです」

「なんでここに居る、ヘルメス」

お嬢様が重症だと聞いて、無事かどうかと次のオリンピアの説明に参りましたと笑顔で言う。
オリオンは大したことじゃない、説明は自分等で知るから要らないと返す。

「おや、周りが敵だらけでどうやって」

「自分たちで何とかする」

いい加減、私たちに付きまとうのは止めろと言い、ヘルメスの横を通るオリオン。
俺っちたちも横を通った時、ヘルメスが小さな声で言った。

「お嬢様を頼みますよ、烏野君、五角君」

「「っっ!!」」

振り返るとヘルメスの姿はなかった、周りを見渡しても居なかった。
オリオンに呼ばれてすぐに後を追った。
しばらくしてヘルメスが布を持って姿を現す、遺跡の陰から出てくる男。

「全く、オリオンお嬢様は頑固なのだから」

「仕方ないですよ~、お嬢様ですから~」

「とりあえず、1度ゼウス様の所に戻りますよ」

「は~い、ヘルメス様」

その喋りをしていいのは仕事じゃないときだけだと言い、分かりましたと返す男。
ヘルメスと男はそのままゼウスの元に戻って行った。

_______

先を急いで歩いていると、参加者がちらほら目に入る。
俺っちたちを見てざわつく、そしてオリオンに近付き前に立つ男。

「あのっ、あの時はありがとうございました!」

「...誰だ?」

「僕はイシバランケ―、最後の難関で助けてもらった」

「ああ、あの時のか」

怪我は平気か?と聞くオリオン、イシバランケ―ははい!大丈夫ですと返した。
それならよかったと言いオリオンは手を前に出す。

「星河一天学園1年・オリオンだ、よろしく」

「同じ1年なんだね!よろしく、オリオン!」

嬉しそうに手を握り返すイシバランケー。
俺っちたちを忘れている気がと思っていると、その後ろから男がやってきた。

「イシバランケ―、何してんだ、早く行くぞ!」

「あっ、兄ちゃん!」

ケツァルコアトル先輩が待っているぞと言い、そのままイシバランケ―の手を掴んだ。
オリオンの手を離し、ごめんね、またね!と笑顔で言い行ってしまったイシバランケ―。

「いい奴だったな」

「オリオン、ケツァルコアトルって万物の神なんだろ?」

「メソアメリカの奴等だろう」

やはり、今回の参加者は相当の実力者ばかりだなと言い、歩き始めるオリオン。
マジかよ、今はどんな奴等が残っているんだと聞けば、誰が残っているかはこれから分かることだと言われた。
俺っちたちはオリオンを追いかけた。
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