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第二章
五話
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勧められたソファへ、エリオットとラヴィックが一緒に座り、ベルが単体で座った。その方が後ろに立つロセウスたちも、窮屈にならなくて済むだろうと思ったからだ。
話は輝人及びその召喚獣である四人へ、感謝等の意を伝えるところから建国祭の話へと移っていく。エドアルドはその際に、何度かベルに視線をよこしていた。おそらく話が通っているか不安があったのだろう。安心させるように首肯すれば、安堵したように言葉を口にしていた。国王よりも立場が上である他国の輝人に、失礼があってはいけないという気持ちからなのだろう。自身より何歳も年上の国王のそんな姿を見て、失礼ながらも内心笑ってしまった。
「ベル様より耳にしているかとは思いますが、建国祭は四日後の朝から三日間王都にて行われます。建国祭に参加していただけるだけでありがたいのですが、予定の調整のため参加の日時をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。一応私の中では、初日の昼頃を予定しています。皆で出し合った案なら、おそらく初日の方がいいと思うので」
盛り上げるなら初日がいいに決まっている。建国祭の始まりの挨拶でもある国王の挨拶の後に行ってもいいのだが、基本的に人が多く集まるのは昼過ぎからだ。ならばそこを狙って多くの人に楽しんでもらいたいと思った。
同じくソファに座っているエリオットとラヴィックに、視線で意見を促せば、二人も同じ意見らしく、ベルの意見に賛成をしてくれた。
「ベルの言う通り、初日の昼過ぎ……十四時くらいがちょうどいいかと。それならば昼食もだいたいの者が済ませて祭りを楽しんでいる最中だろうからな」
「そうだな。んで欲しい時間は、ざっと一時間くらいか? それくらいあれば、足りると思うぞ」
無理そうな時間であれば国王から別の案を出されたのだろうが、至って普通の時間だったからか、あっけなく日時は決まっていった。
内容はエドアルドたちにも楽しんで欲しいという理由から、召喚術師と召喚獣として参加するとしか伝えはしなかった。もちろん危険なことはしない、と補足を付け加えれば、エドアルドは慌ててそんなことは思ってもいないと首を横に振っていた。内容を話さない代わりに安心させたかったのだが、違う意味で捉えさせてしまったようだ。申し訳なくも思いつつ、当日の細かな打ち合わせをしていった。
打ち合わせ自体は一時間程度で終わり、そのタイミングで鞄から二通の手紙を取り出して、エドアルドに渡す。
「これは?」
「ここにはいない二人の輝人、ニード・ブラウンとヴァイオレット・ウィオラになるべく早く届けて欲しいんです。そしてすぐに返信の手紙をもらってきて欲しいんです。先日の事件の件で二人の意見を聞ききたいのですが、宅配業者に頼むとどうしても時間がかかりすぎてしまうので……。お願いできますか?」
「もちろんです。他人事ではないですから」
国王は迷うそぶりもなくすぐさま頷くと、控えていた男性に二通の手紙を預けた。
「助かります。返事が来たらすぐに知らせをください」
「いや、手紙を受け取り次第、ベル様の自宅までその者を向かわせましょう」
「ありがとうございます。もし留守の場合は、郵便受けに入れておいてください。私の家はロセウスが結界を張ってくれているため、盗みなどの心配はないので」
万が一すれ違いになって、待たせてしまったら申し訳がない。
「わかりました。――今、ベル様がおっしゃられた通りに動いてくれ」
エドアルドが男性へ指示をすると、男性は頭を下げ、足早に部屋を退出した。
「ところで、皆さま。建国祭までの間は、どちらに宿泊なされますか?」
話が一段落したところで、エドアルドが切り出してきた。
「あー、それは考えてなかったなあ」
ラヴィックが頭を掻きながら呟いた。
ベルの家に泊めてあげたいのは山々だが、残念なことに客室がない。最近では全く使用していないそれぞれの個人部屋に、リビング、そしてほぼ毎日使用しているベッドルームのみ。さすがにあのベッドルームを貸すわけにはいかなかった。
「そうだな。ベルの街にある宿泊施設にでも泊まるとするか。ただ、建国祭が近いからな。王都からも比較的近い位置にある街だから、空いているかが心配だな」
建国祭は国を挙げての祭りだ。遠くの街からわざわざ足を運んで来る者も多い。王都の宿泊施設だけでなく、近隣の街の宿泊施設もそれなりに予約が埋まっているはずだ。さすがに輝人だからと、人の予約分を奪うわけにもいかない。
一度街に帰ってから確認が必要となるだろう。もし空いていなければ、今日だけはリビングなどを使ってもらうしかない。そう考えていると、エドアルドが魅力的な提案をしてきた。
「もしよければ、街にある王族の別宅をお使いください」
「別宅? こんな目と鼻の先に?」
疑問を口にすれば、エドアルドは苦笑しながら頷いた。
「はい。十年前にベル様が深い眠りにつかれたとき、お忍びで何度か足を運ばせていただきまして……。その際にすぐ休憩等ができるよう、一つの小さな家を購入したのです」
自国の輝人だけが長い眠りについてしまったのだ。そのような行動に出るのは当然かもしれない。ただその話し方から察するに、ベルの姿を見ることは叶わなかったのだろうと容易に想像することができた。仕方のないこととはいえ、申し訳なく感じてしまう。
そんなベルの気持ちを読み取ってか、エドアルドは気にしていないことを主張するかのように、穏やかな笑みを浮かべながら続きを話した。
「家の中は、いつでも休憩できるように雇っている者に毎日掃除させています。ですので今日からでも使えるはずですよ。鍵と……念のため、書状を書いてお渡ししますね」
エドアルドとしても、居場所を把握できていた方が都合がいいのだろう。断られないうちにと、ベルたちの返事を聞くことなく、側近の者に鍵を持って来るように伝え、その場でさらさらと書状を書いていた。
「ありがたい申し出、感謝する」
しかし断る予定は元々なかったため、エリオットは軽く礼を告げると、エドアルドの側近から鍵を、そしてエドアルドから書状を受け取っていた。
話は輝人及びその召喚獣である四人へ、感謝等の意を伝えるところから建国祭の話へと移っていく。エドアルドはその際に、何度かベルに視線をよこしていた。おそらく話が通っているか不安があったのだろう。安心させるように首肯すれば、安堵したように言葉を口にしていた。国王よりも立場が上である他国の輝人に、失礼があってはいけないという気持ちからなのだろう。自身より何歳も年上の国王のそんな姿を見て、失礼ながらも内心笑ってしまった。
「ベル様より耳にしているかとは思いますが、建国祭は四日後の朝から三日間王都にて行われます。建国祭に参加していただけるだけでありがたいのですが、予定の調整のため参加の日時をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。一応私の中では、初日の昼頃を予定しています。皆で出し合った案なら、おそらく初日の方がいいと思うので」
盛り上げるなら初日がいいに決まっている。建国祭の始まりの挨拶でもある国王の挨拶の後に行ってもいいのだが、基本的に人が多く集まるのは昼過ぎからだ。ならばそこを狙って多くの人に楽しんでもらいたいと思った。
同じくソファに座っているエリオットとラヴィックに、視線で意見を促せば、二人も同じ意見らしく、ベルの意見に賛成をしてくれた。
「ベルの言う通り、初日の昼過ぎ……十四時くらいがちょうどいいかと。それならば昼食もだいたいの者が済ませて祭りを楽しんでいる最中だろうからな」
「そうだな。んで欲しい時間は、ざっと一時間くらいか? それくらいあれば、足りると思うぞ」
無理そうな時間であれば国王から別の案を出されたのだろうが、至って普通の時間だったからか、あっけなく日時は決まっていった。
内容はエドアルドたちにも楽しんで欲しいという理由から、召喚術師と召喚獣として参加するとしか伝えはしなかった。もちろん危険なことはしない、と補足を付け加えれば、エドアルドは慌ててそんなことは思ってもいないと首を横に振っていた。内容を話さない代わりに安心させたかったのだが、違う意味で捉えさせてしまったようだ。申し訳なくも思いつつ、当日の細かな打ち合わせをしていった。
打ち合わせ自体は一時間程度で終わり、そのタイミングで鞄から二通の手紙を取り出して、エドアルドに渡す。
「これは?」
「ここにはいない二人の輝人、ニード・ブラウンとヴァイオレット・ウィオラになるべく早く届けて欲しいんです。そしてすぐに返信の手紙をもらってきて欲しいんです。先日の事件の件で二人の意見を聞ききたいのですが、宅配業者に頼むとどうしても時間がかかりすぎてしまうので……。お願いできますか?」
「もちろんです。他人事ではないですから」
国王は迷うそぶりもなくすぐさま頷くと、控えていた男性に二通の手紙を預けた。
「助かります。返事が来たらすぐに知らせをください」
「いや、手紙を受け取り次第、ベル様の自宅までその者を向かわせましょう」
「ありがとうございます。もし留守の場合は、郵便受けに入れておいてください。私の家はロセウスが結界を張ってくれているため、盗みなどの心配はないので」
万が一すれ違いになって、待たせてしまったら申し訳がない。
「わかりました。――今、ベル様がおっしゃられた通りに動いてくれ」
エドアルドが男性へ指示をすると、男性は頭を下げ、足早に部屋を退出した。
「ところで、皆さま。建国祭までの間は、どちらに宿泊なされますか?」
話が一段落したところで、エドアルドが切り出してきた。
「あー、それは考えてなかったなあ」
ラヴィックが頭を掻きながら呟いた。
ベルの家に泊めてあげたいのは山々だが、残念なことに客室がない。最近では全く使用していないそれぞれの個人部屋に、リビング、そしてほぼ毎日使用しているベッドルームのみ。さすがにあのベッドルームを貸すわけにはいかなかった。
「そうだな。ベルの街にある宿泊施設にでも泊まるとするか。ただ、建国祭が近いからな。王都からも比較的近い位置にある街だから、空いているかが心配だな」
建国祭は国を挙げての祭りだ。遠くの街からわざわざ足を運んで来る者も多い。王都の宿泊施設だけでなく、近隣の街の宿泊施設もそれなりに予約が埋まっているはずだ。さすがに輝人だからと、人の予約分を奪うわけにもいかない。
一度街に帰ってから確認が必要となるだろう。もし空いていなければ、今日だけはリビングなどを使ってもらうしかない。そう考えていると、エドアルドが魅力的な提案をしてきた。
「もしよければ、街にある王族の別宅をお使いください」
「別宅? こんな目と鼻の先に?」
疑問を口にすれば、エドアルドは苦笑しながら頷いた。
「はい。十年前にベル様が深い眠りにつかれたとき、お忍びで何度か足を運ばせていただきまして……。その際にすぐ休憩等ができるよう、一つの小さな家を購入したのです」
自国の輝人だけが長い眠りについてしまったのだ。そのような行動に出るのは当然かもしれない。ただその話し方から察するに、ベルの姿を見ることは叶わなかったのだろうと容易に想像することができた。仕方のないこととはいえ、申し訳なく感じてしまう。
そんなベルの気持ちを読み取ってか、エドアルドは気にしていないことを主張するかのように、穏やかな笑みを浮かべながら続きを話した。
「家の中は、いつでも休憩できるように雇っている者に毎日掃除させています。ですので今日からでも使えるはずですよ。鍵と……念のため、書状を書いてお渡ししますね」
エドアルドとしても、居場所を把握できていた方が都合がいいのだろう。断られないうちにと、ベルたちの返事を聞くことなく、側近の者に鍵を持って来るように伝え、その場でさらさらと書状を書いていた。
「ありがたい申し出、感謝する」
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