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事例1 九十九人殺しと孤高の殺人蜂【事件篇】
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二人は倉科の思惑や苦悩など知らずに、世間話をしながら後についてくる。キャリアとノンキャリアの間に全く溝がない姿をちらりと見て、ますます0.5係などにするものかと思った。
国の決定事項であろうが、務まらないと証明できれば覆す隙は生じる。こんな思いをするのは自分だけで充分だ。いや、自分だって兼任という形だからこそ、これまでやって来れたのだ。もし専任ともなれば、本格的に二人は潰れてしまうかもしれない。
重い足取りのまま、倉科は【人妻ヘルス】の前までやって来た。どうにも気が重い。もし、坂田が二人のことを気に入ってしまったら、それこそ言い訳が通用しなくなってしまうだろう。できる限り坂田に嫌われるようにアドバイスをしてやりたかったが、あいつはとにかく天邪鬼である。普通の人間が不愉快に思うことを、逆に愉快に思ってしまう節がある。余計な事前情報を二人に与えることは、あえてしたくなかった。
「ここだ――。言っておくが、ここから先で見たことは機密事項になる。勝手なことを言っているのは分かっているが、口外しないで貰うとありがたい。お前達のためにもならんだろうからな」
機密など、もはやどうでも良かったのであるが、彼らの進退に影響するのはよろしくない。黙っていられるのであれば黙って貰っていたほうが良いに決まっている。もっとも、この先で見たことを口外したところで、それを信じる者なんていないだろうが。
「確かに機密っすねぇ。警部がこういうお店が好きだったなんて――。まぁ、人の趣味なんてそれぞれっすから、別に軽蔑もしねぇっす」
外看板にでかでかと描かれた、いかがわしい女性の姿に、尾崎は納得するかのように頷いた。そうではない。そうではないのだが、普通の感覚で考えたら当然のことかもしれない。
「け、警部――。こういうところは尾崎さんと二人で来られたほうがいいんじゃないですか?」
縁は顔を赤らめて軽蔑の眼差しを向けてくる。耳まで真っ赤にしている辺りウブなのかもしれない。
「いや、誤解だ。誤解。用事があるのはこの店じゃない」
倉科は辺りを見回して人の目がないことを確認すると、いそいそと例の扉の前へと向かった。妙な誤解をされているという焦りからか、鍵を取り出すのに手間取ってしまった。
半地下になっているヘルス店の脇。そこにある扉のさらなる先に、二人へと会わせたい人物がいる。まごつきながらも鍵を差し込むと扉を開け、中に入るように二人へと促した。
「人目につくとまずい。早く」
国の決定事項であろうが、務まらないと証明できれば覆す隙は生じる。こんな思いをするのは自分だけで充分だ。いや、自分だって兼任という形だからこそ、これまでやって来れたのだ。もし専任ともなれば、本格的に二人は潰れてしまうかもしれない。
重い足取りのまま、倉科は【人妻ヘルス】の前までやって来た。どうにも気が重い。もし、坂田が二人のことを気に入ってしまったら、それこそ言い訳が通用しなくなってしまうだろう。できる限り坂田に嫌われるようにアドバイスをしてやりたかったが、あいつはとにかく天邪鬼である。普通の人間が不愉快に思うことを、逆に愉快に思ってしまう節がある。余計な事前情報を二人に与えることは、あえてしたくなかった。
「ここだ――。言っておくが、ここから先で見たことは機密事項になる。勝手なことを言っているのは分かっているが、口外しないで貰うとありがたい。お前達のためにもならんだろうからな」
機密など、もはやどうでも良かったのであるが、彼らの進退に影響するのはよろしくない。黙っていられるのであれば黙って貰っていたほうが良いに決まっている。もっとも、この先で見たことを口外したところで、それを信じる者なんていないだろうが。
「確かに機密っすねぇ。警部がこういうお店が好きだったなんて――。まぁ、人の趣味なんてそれぞれっすから、別に軽蔑もしねぇっす」
外看板にでかでかと描かれた、いかがわしい女性の姿に、尾崎は納得するかのように頷いた。そうではない。そうではないのだが、普通の感覚で考えたら当然のことかもしれない。
「け、警部――。こういうところは尾崎さんと二人で来られたほうがいいんじゃないですか?」
縁は顔を赤らめて軽蔑の眼差しを向けてくる。耳まで真っ赤にしている辺りウブなのかもしれない。
「いや、誤解だ。誤解。用事があるのはこの店じゃない」
倉科は辺りを見回して人の目がないことを確認すると、いそいそと例の扉の前へと向かった。妙な誤解をされているという焦りからか、鍵を取り出すのに手間取ってしまった。
半地下になっているヘルス店の脇。そこにある扉のさらなる先に、二人へと会わせたい人物がいる。まごつきながらも鍵を差し込むと扉を開け、中に入るように二人へと促した。
「人目につくとまずい。早く」
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