縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

文字の大きさ
54 / 581
事例1 九十九人殺しと孤高の殺人蜂【事件篇】

41

しおりを挟む
「女、話を元に戻すぞ――。これらのポエムから犯人像を推察した結果、お前は犯人が学生であるとの答えを導き出した。さてさて、具体的には何が根拠になるんだ?」

 何事もなかったかのように話を元に戻した坂田に、縁は明らかに不服そうな表情を浮かべる。その鋭い眼光は坂田に向けられ続けていた。大人しくて、どちらかと言えばオドオドとした印象が強い縁だけに、そのギャップに倉科はただ驚くばかりだ。縁は黙ったままだった。

「くくくくくっ――。気の強ぇ女は嫌いじゃねぇぜ。俺の女にしてやろうか?」

 縁の感情を逆撫でするかのごとく、いらんことを口にする坂田。そこで縁が何か言い返そうと口を開きかけたところで、倉科は待ったをかけた。

「山本、ここで坂田とやり合ったところで、事件の犯人が捕まるわけじゃない。気持ちは分かるが、今やるべきことは坂田とやり合うことじゃないだろ?」

 坂田の機嫌が良いうちに、さっさと事件の情報を聞き出しておきたい。縁と坂田がぶつかった時はひやりとしたが、どうやらまだ坂田のヘソは曲がっていないようだ。縁にはぐっとこらえて貰い、話の方向を修正すべきだ。

「縁、我慢っす」

 置いてきぼりをくらっている尾崎が、自分の存在を忘れられまいと口を開く。縁は「分かっています」と呟いて咳払いをひとつ。大きく深呼吸をしてから改めて坂田を見据えた。

「根拠は幾つかあります。これらのポエムの中にこんなワードが出てくる。例えば【後ろの席】【帰りの掃除】【渡り廊下】などです。ひとつめのポエムの中に含まれている【後ろの席】ですが、これは果たしてどのような状況を指しているのか。これって、学校の教室なんじゃないでしょうか?」

 縁が着目したのは、ひとつめのポエムの中にある【後ろの席】というワードだ。ここから縁は学校の教室を連想したようだった。ずらりと並んだ机。前の席に座っている被害者を眺めながら、にやりと笑みを浮かべる男の姿がイメージできた。

「あ、もしかして【帰りの掃除】って、授業が終わって放課後にやらされる奴っすか? 学生時代によくサボったものっす」

 尾崎に言われて、倉科は妙に納得した。確かに【帰りの掃除】は学校時代に誰しもがやらされた経験があるだろう。また【渡り廊下】というワードも、なんとなく学校を連想することができる。尾崎の言葉に頷いてから、縁は続けた。

「決定的なのは最新のポエムの中で使われている【今年も夏がやってくる】に続く【離れ離れになっているうちに】という言い回しです。どうして夏がやってくるだけなのに、離れ離れになると表現しているのでしょうか? それは――」

「くくくっ、に入るからだよなぁ?」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...