縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例1 九十九人殺しと孤高の殺人蜂【事件篇】

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「ほら、警部。これです――」

 倉科がパンフレットを眺めたままでいると、縁が自分のパンフレットを差し出し、ある文言もんごんを指差した。

 ――少人数制による綿密なカリキュラム。当塾では多数の講師が在籍しているため、じっくりと学べる環境をご用意いたしました。

 縁が指差した文言の下には表のようなものがあり、そこには教科と、恐らく授業の時間帯であろうか。それらが一週間分ぎっしりと並べられていた。しかも、学年別、能力別と細かくクラスが分けられているようだった。

「この塾では少人数制による授業を行っているようです。しかも学年別、教科別、能力別とクラスを分けています。加えて、在籍している生徒数も多いわけですから――」

「同じ塾に在籍していても、犠牲者同士に接点がなかったことも頷けるっす。中にはすぐに辞めてしまった犠牲者もいるため、今まで共通点が掴めなかったのかもしれないっす」

 これはいよいよ、捜査本部でも掴めていなかった重要な手掛かりとなりそうな雰囲気になってきた。言わば、この塾は学校で言うところのマンモス校。生徒の数が多ければクラスの数も多くなる。また、そこから能力別などで分ければ、さらにクラスは細分化してしまうであろう。となると、同じ塾に属していながら、一度も顔を合わせたことがない生徒など腐るほどいることであろう。これもまた、一切の関わりを持たぬまま卒業を迎える生徒がいるだろうマンモス校と同じ理屈だ。しかも、途中で退学した人間もそこに含まれるわけだから、犠牲者同士に接点がなかったことも納得できる。

「犯人はどこかで犠牲者の個人情報を入手している。だからこそ典型的な秩序型として犯行を実行することができた――。そして、この塾に属していれば、犠牲者の個人情報を手に入れることは不可能ではない――ということか」

 倉科がぽつりと呟き落とすと、縁と尾崎が同時に頷いた。

「プロファイリングによると犯人は学生の可能性が高いっす。この塾は小学生から高校生までの生徒が通っているみたいっすから、もしかすると犯人はここの生徒なのかもしれないっす」

 尾崎の言葉を聞いた縁が「あっ、そうか――」と、これまた何かに気付いたかのように声を上げる。なんだか倉科一人だけが置いてきぼりにされているような感覚だった。

「犯人は遅くとも終電で家に帰っている……。これ、犯人が学生にしては、帰宅時間が遅い時間帯になるのではないかと思っていたんですが、これですっきりしました。犯人が塾に通っているのだとしたら、帰りが遅くなる日があっても家族に怪しまれませんから」
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