縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例1 九十九人殺しと孤高の殺人蜂【事件篇】

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 姉がふらっと現れたのは、大学に入って一年目のことだった。ずっと連絡を取りたいと願っていたし、会いたいと思い続けてきた。しかしながら、姉との久々の再会は、実に後味の悪い奇異なる再会であった。

 季節は確か秋の終わりだったと思う。紅葉を終えた落ち葉が歩道を覆い、木枯らしに吹かれてゆらゆらと舞っていたのを覚えている。何よりも、秋の色にそぐわない真っ白な薄手のワンピースを着ていた姉が、強く印象に残っていた。

 厚手のコートを着込みたくなるほど寒さが厳しくなってきた時期に、お気に入りだった薄手のワンピース一枚でたたずんでいた姉。その時点で、縁は悟った。やはり姉はどこかおかしくなってしまったのだ――と。

 縁の姿を見ると、にこりと……いいや、にたりと笑みを浮かべる姉。ずっと再会を願っていた縁であったが、この時感じたものは喜びや嬉しさではなく、恐れだった。

 大学の授業へと向かう予定だった縁は、どうしていいか分からず、叔父へと連絡を取った。叔父は電話口で「そんなはずはない」と言った。姉を引き取った親戚の連絡先を教えて欲しいとお願いしたが、仕事中でそれはできないという。

 長らくの間、離れて暮らし、しかも縁は大学進学のために新天地へとやって来ていた。それを姉はどのようにして調べて会いに来たのか。姉が会いに来てくれたことに不気味さが増すばかりだった。

 どうしたものか――。そう思いながら叔父との電話を切った縁は、周囲に姉の姿がないことに気付いた。辺りを探してみたが、姉の姿はない。しかしながら、あんな状態の姉を放っておくこともできず、縁は一日中姉を探して回った。結局、その日は大学で授業を受けることができなかったし、姉を見つけることもできなかった。

 けれどもそれ以来、姉はふっとした瞬間に、縁へと会いに来るようになった。自宅にいる時、キャンパスで友達と過ごしている時など、日常の隙間に姉が姿を現す。その度に縁はどうしていいのか分からずに奔走ほんそうする。

 近くのホテルに泊まっている――。病気が治ったから、いずれは一緒に住みたい――。そんなことを口にする姉に、縁はとうとう決心した。ふらふらと徘徊をされるのは危ないし、本人は治ったと言っているが、どう見ても病気は治っていない。姉の言動や仕草からは、常人とは違う何かが常に漂っていた。

 ――とりあえず一緒に暮らそう。姉を放っておくのは危ないし、姉のことは自分が責任を持って面倒を見るべきだ。ふっと姉が現れたタイミングでそう提案すると、それが目的であったかのように姉は頷いたのであった。
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