縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例1 九十九人殺しと孤高の殺人蜂【エピローグ】

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 そこで言葉を区切ると、坂田は縁が答えにいたったものと全く同じプロセスをたどる。

「岡田がその段階で、お前達のことを刑事だと知っていたからだ――」

 その通り。岡田があのような発言をしたのは、縁と尾崎が一般人ではなく、刑事であると知っていたからだ。相手が刑事だったからこそ、いち市民――なんて言葉を使ったのである。だが、ここでひとつ問題が出てくる。すなわち、岡田はどのようにして縁達が刑事であると気付いたのかだ。

「さて、ここでひとつ疑問が生じる。岡田がお前達のことを刑事だと知っていたとして、果たしてどこでそれに気付いたのかだ。チョンマゲの話だと、岡田と会った時、お前達は私服だった。それこそ、チョンマゲにいたっては、刑事だと連想しにくいジャージ姿だ。そして、お前達は岡田に対して、自分達が刑事だと名乗ってはいない――」

 坂田の推測に、縁は頭の中で何度も頷いた。彼の言う通り、岡田に会った時の二人は私服姿だった。もちろん、自分達が刑事であることも名乗っていない。それを名乗ったのは、塾の中に案内された後、安堂に話を聞く際のことである。つまり、縁達が刑事であることを知る要素は、岡田には与えられなかったわけだ。それなのにもかかわらず、岡田は縁達が刑事であると知っていた。それは、犯人にしか知り得ない事実を知っていたからだ。

「では、どうしてお前達が刑事であることに岡田は気付いたのか。それは、お前達が岡田に犠牲者の顔写真を見せたからだ。何も知らない人間ならば、ただの女の顔写真にすぎないが、岡田からすれば、それらは全て自分が手にかけた女達だ。それを用いてお前達が接触してきたからこそ、岡田はお前達のことを刑事だと瞬時に察した。なんせ、これまで殺した女の写真を持って、自分がアルバイトしている塾を訪ねてきたんだからな。どんなに勘が鈍いやつでも気付くだろう」

 あの時、縁達は犠牲者達の顔写真を見せて、見覚えはないかと岡田に問うている。その結果、彼は知らないとシラを切った。しかしながら、その並べられていた顔写真は、全て自分が殺した女子生徒達。表向きは何事もなかったかのように取り繕ってはいたが、犠牲者達の顔写真を持って塾に訪れた縁達を、刑事であると察したであろうことは言うまでもない。

「前情報がない状況なのに、犠牲者の顔写真を見た時点でお前達のことを刑事だと察した。だからこそ、岡田の口からは、いち市民として当然のことをしたなんて言葉が出たってわけだ」
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