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事例2 美食家の悪食【事件篇】
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公の場で事件の話なんて――。そんなことを考えた縁だったが、安野に続いて店に入った際、妙に納得がいった。お客さんがいないのだ。時間帯的な問題なのか、それとも今日が平日のど真ん中であるためか。もしくは、失礼な話であるが、流行っていないお店なのか。公の場で事件の話をするわけにはいかないが、お客がいないのであれば、公もへったくれもない。もっとも、それでも店にはスタッフがいるわけであり、やはり事件の話をするには相応しくないことに間違いはないのだが。
「あのね――たまには閑古鳥が鳴くことだってあるのよ」
安野の皮肉たっぷりの一言にも慣れているのか、カウンター越しにグラスを拭いていた黒いドレスの女性が、軽く安野をあしらった。
「たまには客が入ることもある――の間違いじゃないのか?」
それでもめげずに皮肉っぽい言葉を吐く安野。その様子から、随分とカウンター越しの女性とは親しいようだ。
肩より長い黒髪で、耳元で段がつけられている。前髪は綺麗に切り揃えられ、縁の想像する水商売の女性とは少し印象が異なった。俗にいう姫カットというやつか。筋の通った鼻立ちに、ばっちりとメイクをして大きく見せている目。お世辞抜きにも美人の部類に入ると思うのであるが、どうしてこうも客が入っていないのか。なんとなくだが、地理的に問題があるのではないか――そんなお節介なことまで考えてしまった。
安野がカウンターの角に座り、促された尾崎が安野の隣に座る。縁は尾崎からひとつ席を空けて座った。別に尾崎のことが嫌いというわけではなく、無意識に異性と席を空けてしまうのは自然なことだ。尾崎も全く気にしていないらしい。カウンターは狭く、数えてみると五席しかない。
「今日はママ一人か?」
黒いドレスの女性から手渡されたおしぼりで手を拭きながら、安野は店内を見渡す。どうやら彼女が、このスナックのママらしい。言われてみれば、そんな感じの貫禄があるように思えた。つられて店内を眺めてはみるが、スタッフの姿はおろか、他のお客の姿もない。有線放送の音が虚しく響いているだけだ。
「ミサトが買い出しに出てるわ。それにしても、安野さんが女の子を連れてくるなんて珍しいじゃない。どこかのお店の子?」
一応、この有様ではあるが、店は二人で回しているらしい。仕返しとばかりに皮肉たっぷりに言われた安野は、鼻で笑ってそれをあしらった。
「そんなわけないだろう。この二人は、まだ若いけど刑事なんだ。ちょいと他の署からレンタルしてるだけなんだよ」
「あのね――たまには閑古鳥が鳴くことだってあるのよ」
安野の皮肉たっぷりの一言にも慣れているのか、カウンター越しにグラスを拭いていた黒いドレスの女性が、軽く安野をあしらった。
「たまには客が入ることもある――の間違いじゃないのか?」
それでもめげずに皮肉っぽい言葉を吐く安野。その様子から、随分とカウンター越しの女性とは親しいようだ。
肩より長い黒髪で、耳元で段がつけられている。前髪は綺麗に切り揃えられ、縁の想像する水商売の女性とは少し印象が異なった。俗にいう姫カットというやつか。筋の通った鼻立ちに、ばっちりとメイクをして大きく見せている目。お世辞抜きにも美人の部類に入ると思うのであるが、どうしてこうも客が入っていないのか。なんとなくだが、地理的に問題があるのではないか――そんなお節介なことまで考えてしまった。
安野がカウンターの角に座り、促された尾崎が安野の隣に座る。縁は尾崎からひとつ席を空けて座った。別に尾崎のことが嫌いというわけではなく、無意識に異性と席を空けてしまうのは自然なことだ。尾崎も全く気にしていないらしい。カウンターは狭く、数えてみると五席しかない。
「今日はママ一人か?」
黒いドレスの女性から手渡されたおしぼりで手を拭きながら、安野は店内を見渡す。どうやら彼女が、このスナックのママらしい。言われてみれば、そんな感じの貫禄があるように思えた。つられて店内を眺めてはみるが、スタッフの姿はおろか、他のお客の姿もない。有線放送の音が虚しく響いているだけだ。
「ミサトが買い出しに出てるわ。それにしても、安野さんが女の子を連れてくるなんて珍しいじゃない。どこかのお店の子?」
一応、この有様ではあるが、店は二人で回しているらしい。仕返しとばかりに皮肉たっぷりに言われた安野は、鼻で笑ってそれをあしらった。
「そんなわけないだろう。この二人は、まだ若いけど刑事なんだ。ちょいと他の署からレンタルしてるだけなんだよ」
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