縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

文字の大きさ
191 / 581
事例2 美食家の悪食【事件篇】

50

しおりを挟む
 レシピは全て横書きである。まず一番目に料理のタイトル――【人肉炒飯】と銘打たれ、その下には料理の写真らしきものが載せられている。さらにその下には材料――【白米……適量】【ねぎ……適量】【生卵……1個】と順番に中央揃えで並び立てられている。だからこそ、やたら左右に余白が目立つように思えるのかもしれない。その材料で一際異色さを放つのは、言うまでもなく材料の最後に記されている【人肉……2本】の文字。

 それに続いて三段に分けられて書かれたコメントらしきもの。これがどうにも気味が悪い。文章そのものの内容が不気味なのと、人の肉を使った料理が、さも当たり前であるかのように書かれているのも気持ち悪い。

 ――【人肉とパラパラのご飯が見事にマッチする至高の一品】。

 ここで文字列は改行され、中央揃えで次の文字列へと移る。

 ――【人肉を口に含むとじわりと肉汁が出てご飯に染み込む】。

 正直なところ、頭がおかしいなんてレベルじゃなかった。人が人を喰らうという時点で倫理的なタブーを犯してしまっているわけだが、コメントからも、まともな神経をしている人間の仕業ではないことが充分に伺える。ここでさらに文字列は改行され、同じように中央揃えで三段目に続く。

 ――【ご家庭でも簡単に作れる一品ぜひお試しあれ】。

 家庭で作るにも材料の調達ができないし、仮にそれができても誰が作るものか――。思わず心の中で悪態をつく倉科。文章そのものはもちろん不気味だが、なんだか気持ちの悪さを感じる要因は、どうやら他のところにあるようだ。この文章――句読点が使用されていないから、なんだか気持ちの悪さを感じるのかもしれない。

 もう一方のレシピにも、同じような気味の悪さが漂っている。もはや【人肉野菜炒め】なんて名前だけで辟易へきえきとしてしまう。材料は【もやし……1袋半】【キャベツ……2分の1】【人参……1本】とごく当たり前の材料が並び、またしても最後の最後で【人肉……8本】となっている。

 コメントは以下のようになっていた。

 ――【お手軽料理の定番】。

 ――【しんなりとしていて新鮮さの残る野菜に中がレアの人肉が見事にマッチ】。

 ――【栄養満点でおいしい一品はお子様にもおすすめですよ】。

「それで坂田……。このレシピのどこに犯人の几帳面さが出ているっていうんだ?」

 またしても胃から込み上げてきたものを押し戻しつつ、倉科は率直に坂田へと問うた。

「――そこに記されている料理の名前、材料、コメント全てにおいて、使用されている文字数が全部偶数になるようになってんだよ」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...