縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例3 正面突破の解放軍【事件篇】

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 アンダープリズンにおいて、まず停電ということ自体が、意図的でもない限り起きない。電子制御されている部分が大半であるがゆえに、停電は致命傷になってしまうからだ。確か、そうなってしまうことを回避するために、外部からの電力を引っ張るのに加えて、自家発電で同時に電力を確保していたはず。それだけでも充分なのかもしれないが、予備電源としての蓄電もしていたはずだ。よって、メインが落ちても予備電源に切り替わるだけのはず。いきなり非常灯を含む全ての明かりが落ちるなんてことは、意図的に電源を落とそうとでもしない限り、まずあり得ないことだ。

「これも解放軍の仕業なんですかね?」

 暗闇となってしまった空間に、中嶋の声が漂う。ここは完全な地下であるから、停電した時には真の暗闇に包まれてしまう。それにしても、ここまで正真正銘の闇に包まれるとは思わなかった。すぐそばにいたはずの中嶋が遠いような気さえする。

「そうとしか考えられん――。ただ、こうして俺達が実感しているように、ここは電気が落ちてしまうと、全くと言っていいほど視界が効かなくなる。しかも、空調なんかの設備も全て止まってしまうわけだ。俺達だけじゃなくて、解放軍にもデメリットが生じる。ただでさえ、何もなくとも優位に立っている解放軍だ。どうして、今になって電力をダウンさせるのか分からん。中嶋はどう思う?」

 暗闇に抱く本能的な恐怖。それらを振り払うかのごとく、ふと気付いた疑問点を闇の中へと投げ返す。この状況で解放軍が電力をダウンさせた意味が分からない。わざわざ電力をダウンさせなければならない理由でもあるのだろうか――。楠木が闇の中に投げかけた疑問は、どういうわけだか、ずっと宙を漂っているだけだった。中嶋からの返事がないのだ。

「――中嶋?」

 彼の名前を呼んでみたが、返ってきたのは耳が痛くなるような静寂だけ。まるで最初から中嶋という人物などいなかったかのごとく、まるでふっと姿を消してしまったような気がした。

 楠木は辺りを見回す――といっても、見えるのは闇、闇、闇。どこを見ても闇。目が慣れるにも時間がかかるであろう漆黒。

「中嶋、どうした?」

 問いかけながら、部屋の中へと足を踏み入れた。もちろん、明かりがないから周囲に何があるのか分からない。電気が消える前の記憶を頼りに、中嶋がいた辺りへと向かおうとするが、もはや漆黒の闇は方向感覚まで楠木から奪おうとしていた。
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