縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

文字の大きさ
371 / 581
事例3 正面突破の解放軍【事件篇】

105

しおりを挟む
 縁達が近くに潜んでいることも知らずに、桜とゴリラはある部屋の前で立ち止まる。改めてゴリラが銃口を突きつけ、桜は鍵らしきものを取り出した。第三階層は専門的な知識を持つ者が出入りするところ。そして、エンジニアとしてここに駐在している桜もそのうちの一人である。 

「どうするっすか? 今なら彼女を助けられそうっす」

 小声で問うてきた尾崎に対して、坂田は首を横に振る。尾崎の言う通り、桜を助けるのであれば今が絶好のチャンスのように思えるのだが、どうやら坂田の考えは違うらしい。

「いや、もう少し様子を見る。あの女を助けるのは、もう少し後でもいい――。あいつらが何を考えているのか、ちょっとばかし観察してぇんだよ」

 坂田は相変わらず、何を考えているのか分からない。桜のことよりも、解放軍の動向を優先するつもりらしい。共感性を持たず、人を人だと思っていない坂田らしいと言えば坂田らしい。

「ですが、彼女がいつ危険にさらされるのか分かりませんし――」

 ただ、縁はそこまで薄情ではない。解放軍が何をしようとしているのか。何を目的にここへとやって来たのか……気になることは多々あるが、それよりも桜のことを優先させてやりたい。解放軍の目的などは、他の場面でも知ることができるかもしれないが、桜の命はひとつだけ。失ってしまったら元には戻らない。

「まぁ、落ち着けよ。あいつらだって馬鹿じゃねぇ。ここにあの女を連れてきたのにだって理由と目的があるはずだ。格好から察するに、あの女はここのシステムエンジニアってところだろ? だとすると、アンダープリズンのシステムそのものを書き換えるとか、解放軍にとって有利になるように組み替えるとか――目的の幅も広がるだろう。解放軍が何をどうするつもりなのか……。しばらく泳がせた上で、あの女を助け出して聞き出せばいいだろ? そもそも、目的が達成されるまで、あの女だって殺されねぇだろうよ」

 やはり坂田は、解放軍を泳がせて、その目的を探ろうとしているようだ。それらしいことを並べ立てはしたが、結局のところ桜を餌にすることに変わりはないらしい。助けられるのに助けられないという状況がもどかしいが、しかし坂田の言っていることも全くのトンチンカンというわけでもないから困る。尾崎も坂田に反発を見せなかったし、ここは縁もぐっと堪えて、坂田の方針に乗っかることにする。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...