縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

文字の大きさ
399 / 581
事例3 正面突破の解放軍【解決篇】

事例3 正面突破の解放軍【解決篇】1

しおりを挟む
【1】

 縁達の足音に合わせているのではないかと思うほどの軽快なリズムをバックに、階段を駆け上る。本来ならば解放軍を警戒し、それこそライフルを持っている楠木を先頭に、ゆっくりと一歩ずつ進むべきなのであろう。だが、解放軍の最終的な目的が集団自決だと分かった今、無数に響くアサルトライフルらしき銃声に、いちいち周囲を警戒することなどできなかった。レジスタンスリーダーの正体が明らかになったことが要因で、なんだか妙に強気になってしまっているのは、果たして縁だけなのだろうか。

 第二階層にたどり着くと同時に、ぴたりと銃声が止み、食堂へと向かう縁達の足音だけが廊下にはやけに響いた。つい今しがたまではミシンの音が入り混じっていたのに、それが嘘だったかのような静寂――。それを振り払うかのごとく楠木の声が飛ぶ。

「食堂に突入する際は俺が前に出る! 0.5係はバックアップしてくれ!」

 楠木が走る速度を上げ、縁達の前へと出た。しかしながら、さらにその前を疾走する坂田には追いつけない。このままでは先に坂田が食堂に突入してしまうのだろうが、楠木もその辺りは仕方がないと割り切っているのかもしれない。

「了解っす!」

 尾崎がそう答えつつホルスターから拳銃を抜いた。倉科も拳銃を引き抜くが、縁はあえて拳銃には手を触れず、ペンライトで前方を照らし続けた。レッグホルスターを装着しているがゆえに、拳銃を引き抜く動作はスムーズにできるし、楠木に続いて尾崎と倉科が控えていれば、それに縁が加わる必要もないだろう。それよりも、今は照明係に徹したほうが良さそうだ。

 辺りは相変わらず真っ暗であり、頼れるのはそれぞれが持っている明かりのみ。縁はできる限り楠木の先を照らし、明かりを確保してやる。しかし、曲がり角をややオーバーターン気味に回ると、真っ暗闇だった廊下が一転。遥か向こうがわに、ほんのりとした明かりが漏れていた。どう説明していいのか分からないが、文明的ではない優しい明かりとでも言うべきか。近付くにつれて、それは食堂から漏れる明かりであることが分かった。懐中電灯などの部分的な明かりではなく、食堂全体を包むような、淡い暖色系の明かりが漏れている。

 本当ならば一度立ち止まり、全員の呼吸を合わせてから突入したいところであるが、坂田がさっさと食堂内に突撃してしまう。坂田に協調性を求めるなどナンセンスであり、なし崩し的に楠木を先頭にして縁達も食堂の中へと飛び込んでしまった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...