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事例4 人殺しの人殺し【プロローグ】
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やめておけばいいのに――。よしておけばいいのに、彼女はそっとクローゼットの外に出た。怖くて仕方がないのに、聞き覚えのある笑い声に、その主を確かめずにはいられなかったのだ。
廊下に出る。ぎし――ぎし――ぎし。普段は気にも留めないような床の軋みが、やけに耳についた。心臓はいつ口から飛び出してもおかしくないほどに大きく脈打ち、脳が必死になって感覚を麻痺させようとしているのか、なんだか浮遊感のようなものが伴う。これは現実なのか、それとも夢なのか。騙すならば、もっと上手い具合に騙して欲しいものだ。
廊下にある黒電話の前までやって来て、受話器に手を伸ばす。しかし、その瞬間――。
「あははははははははははははははっ!」
またしても例の笑い声。彼女は体を硬直させ、取り落とした受話器からは無機質な通信音だけが漏れ出す。改めて受話器を手に取ろうとするが、しかしどうしてもリビングのほうが気になって仕方がない。なぜなら、何度も聞こえてくる笑い声は――姉の声に物凄く似ていたのだから。これが聞き覚えのない男の笑い声だったりすれば、そもそも絶対にクローゼットから外には出ない。そこに家族である姉の気配を感じたからこそ、彼女は外に出ようと思ったのだ。
吸い込まれるようにして、ただ一点だけ明かりが灯っているリビングへと向かう。廊下の突き当たりにあるリビングから漏れる明かりは、暖かみも何もかも失ってしまい、むしろ気味が悪かった。
恐る恐るとリビングの扉へと歩み寄り、扉の曇りガラスから中を伺おうとする。しかしながら、曇りガラスであるがゆえに、中の様子は全く分からない。彼女は覚悟を決めて、ノブを握った。できるかぎり音を立てぬようにして回すと、これまた音がしないようにゆっくりと開ける。
クローゼットから様子を伺った時と同じ要領で、少しだけ開いた扉の隙間からリビングの中を覗く。父と母が何事もなかったかのようにテレビを観ながら談笑している――というのならば、どれだけ良かったことか。残念なことに、リビングのいたるところに血らしきものが飛び散り、床には血だまりができていた。ソファーが目隠しになって両親の姿は見えないが、間違いなく両親は床に横たわって息絶えているのだろう。彼女はそのまま視線をゆっくりと上げ、そして驚きのあまり飛び上がりそうになってしまった。ひゅっと息を吸い込み、そしてしばらく呼吸ができなくなった。
――リビングには姉の姿があった。
廊下に出る。ぎし――ぎし――ぎし。普段は気にも留めないような床の軋みが、やけに耳についた。心臓はいつ口から飛び出してもおかしくないほどに大きく脈打ち、脳が必死になって感覚を麻痺させようとしているのか、なんだか浮遊感のようなものが伴う。これは現実なのか、それとも夢なのか。騙すならば、もっと上手い具合に騙して欲しいものだ。
廊下にある黒電話の前までやって来て、受話器に手を伸ばす。しかし、その瞬間――。
「あははははははははははははははっ!」
またしても例の笑い声。彼女は体を硬直させ、取り落とした受話器からは無機質な通信音だけが漏れ出す。改めて受話器を手に取ろうとするが、しかしどうしてもリビングのほうが気になって仕方がない。なぜなら、何度も聞こえてくる笑い声は――姉の声に物凄く似ていたのだから。これが聞き覚えのない男の笑い声だったりすれば、そもそも絶対にクローゼットから外には出ない。そこに家族である姉の気配を感じたからこそ、彼女は外に出ようと思ったのだ。
吸い込まれるようにして、ただ一点だけ明かりが灯っているリビングへと向かう。廊下の突き当たりにあるリビングから漏れる明かりは、暖かみも何もかも失ってしまい、むしろ気味が悪かった。
恐る恐るとリビングの扉へと歩み寄り、扉の曇りガラスから中を伺おうとする。しかしながら、曇りガラスであるがゆえに、中の様子は全く分からない。彼女は覚悟を決めて、ノブを握った。できるかぎり音を立てぬようにして回すと、これまた音がしないようにゆっくりと開ける。
クローゼットから様子を伺った時と同じ要領で、少しだけ開いた扉の隙間からリビングの中を覗く。父と母が何事もなかったかのようにテレビを観ながら談笑している――というのならば、どれだけ良かったことか。残念なことに、リビングのいたるところに血らしきものが飛び散り、床には血だまりができていた。ソファーが目隠しになって両親の姿は見えないが、間違いなく両親は床に横たわって息絶えているのだろう。彼女はそのまま視線をゆっくりと上げ、そして驚きのあまり飛び上がりそうになってしまった。ひゅっと息を吸い込み、そしてしばらく呼吸ができなくなった。
――リビングには姉の姿があった。
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