縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例4 人殺しの人殺し【事件篇①】

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「と、とにかく。こちらとしては――」

 まだ叔父の言い訳は続きそうだったが、しかし倉科は窓の外に人影があることに気付くと、小さく溜め息を漏らした。

「――言い訳なら聞き飽きた。もう切るぞ。俺は忙しいんだ」

 倉科のほうから電話して、散々怒鳴り散らした挙げ句、倉科のほうから勝手に話を切り上げる。頭にきていたとはいえ、大人げないな――と、電話を切ってから思った。

 倉科が通話を終えると、それを待っていたかのように外の人影が窓に歩み寄ってくる。ビシッとしたスーツで決めた男は倉科の部下だった。そこそこの歳の中堅といった具合の部下である。倉科はパワーウインドウを開ける。

「警部、本当に車中泊したんですか?」

 事件の担当から外された挙げ句、中嶋が不起訴になるであろうことを知った倉科は、その怒りに任せて帰ってやるつもりだった。支度をして、さぁ帰ろうとした時になって、第一報が入ったのである。

「あぁ、事件が起きたってのに、家になんて帰ってられんからな。で、もう出動命令は出たのか?」

 警察病院内にて、無差別と思われる殺人事件が発生。詳細は不明であるが、被害者が多数いる模様――。その一報を聞いた倉科は、とりあえず署の駐車場で車中泊することにしたのだった。

 待機するだけならば、署内の仮眠室でも構わなかったのであるが、叔父に文句を言いたかった倉科は、自家用車に乗り込んで何度も叔父へと電話をかけた。さすがに署内で怒鳴り散らすわけにはいかないと考えたからだ。しかし、叔父は完全に居留守を決め込み、諦めた倉科は仮眠をとることにした。そして、朝を迎えてから再び叔父と我慢比べをした後、それに勝利して現在へといたる。この一晩、何をやっていたのかと自分でも思ってしまう。おかげさまで体の節々が痛い。

「えぇ、ついさっき出ました。被害者が複数いるせいで鑑識も随分と時間がかかったみたいですけど、ようやく現場に入れます」

 現場入りするにも順番というものが決まっており、捜査一課の前に鑑識が入ることになっている。現場ごとに異なってはくるが、場合によっては鑑識の作業が長引き、現場入りが遅れてしまうことがある。事件の一報が入ったのは昨夜のことであるため、日をまたぐであろうことはおおよそ分かっていたことだった。だから、中途半端に家へと帰らず、しかし叔父には文句を言ってやりたかったから、部下にその旨を伝えて車中泊をしたわけだ。どうせなら仮眠室で休めば良かった――なんて今さら思ったところで、後の祭りである。
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