縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例4 人殺しの人殺し【解決篇】

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 彼女はもうとんでもないことをやってしまった可能性が高く、今さらお願いされたって手遅れだろう。縁本人の言っていることを照らし合わせて考えても、それは明らかだ。でも、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。きっとここで本当のことを言ってしまったら、神谷は自責の念に苦しむかもしれない。だから、尾崎はあえて大きく頷いてやった。

「分かったっす。自分は普段から縁に迷惑をかけてばかりですし、世話にもなっているっす。いち刑事として、同僚として――そして、一人の人間として、先生のところに連れて来るっす」

 ただし、それは事件が解決し、形はどうであれ彼女が逮捕された後、精神鑑定が必要との判断が下った時のことになるだろう。かなり先の約束になるが、形はどうであれ実現はしたいと思っている。司法の都合になるが、神谷も召集されることだろう。その時、果たして神谷はどんな顔で縁のことを出迎えるのか。

「すいません。彼女は身寄りがいないので、頼れる人もいないんです。こちらの勝手なわがままで申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします」

 神谷はそこで深々と頭を下げてきた。本当のことを言えないままでいるのは心苦しいが、尾崎は取り繕いつつ何度か頷いた。まるで自分を言い聞かせるかのように。そして、この場をごまかすかのように。

「分かったっす。そうと決まれば、早速動くっすから、これで自分は失礼するっすよ!」

 なんというか居たたまれなかった。目の前にいる神谷は、まだ縁が引き返せるところにいるものだと思っているのだ。残念ながら、もう引き返せはしないだろう。いつもは坂田や縁の推理が凄くてついていけない尾崎でも、今回ばかりは推理に自信があった。姉を止めなければと、それを追いかける妹。しかし、それらは全て縁の一人芝居のようなものなのだ。演者は二人で演じているつもりの芝居だが、しかし周囲から見れば、演者はたった一人しかいないのである。

「その――ご協力感謝するっす!」

 そう言い残して立ち去ってはみたが、もはや神谷から得た情報は答えだった。できることならば信じたくはない答え。間違いであって欲しいとも思う答え。神谷の前ではずっと平静を装って強がっていたからか、病院から出てすぐに片膝を折りそうになってしまった。一人で背負うには重たすぎた。

 尾崎は病院から離れつつ、スマートフォンを取り出す。その手は意思を持ったかのように震えていた。――重すぎる。この真実は、一人で背負うには重たすぎる。だから、ここから近場の喫茶店でもなんでも構わないから呼び出して、今すぐにでも負担を共有して貰わねばならない。

 スマートフォンには上司である倉科への発信画面が表示されていた。
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