縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

文字の大きさ
576 / 581
事例4 人殺しの人殺し【エピローグ】

事例4 人殺しの人殺し【エピローグ】1

しおりを挟む
 サイレンが辺りに鳴り響く。アクセルを踏み込むと、その速度は瞬く間に上がり、降り始めた小雨がフロントガラスを叩いた。

「おら、尾崎! もっと急げ! いい加減、警察の威信にかかってくるぞ!」

 復帰してすぐだというのに、随分と人使いが荒い。まぁ、表向きは組織から存在が消されていたものの、助手席の倉科とは毎日のように顔を合わせていたのだ。人使いの荒さはいつものことか。

「これ、もっと早々とアンダープリズンに投げておくべき案件だったんじゃねぇっすか?」

 アクセルをベタに踏み込みながら、信号ひとつない農道をひた走る。パトカーのサイレンが広大な田畑に響き渡って、なんだかやまびこのように返ってくる。

 0.5係という宙ぶらりんの存在は、あの事件のすぐ後に撤廃された。一時は専任という形で0.5係を正式に発足したわけであるが、組織に存在していながら、しかし存在していない人間の扱いというのが、かなり難しかったらしい。しかも、0.5係に任命された人間から犯罪者が出てしまったということもあり、0.5係は解散。尾崎は出戻りという形で、倉科の元で刑事をやり直すことになった。いつの間にか、休職して世界へと武者修行に出ていた――なんて設定があって、それに話を合わせる度に倉科のことを恨んでいる。

「アンダープリズンは最終手段だよ。あの事件以来――国もどこか消極的なんだよ。もし独断で動いていいってのなら、遠の昔に地下に潜ってる」

 もどかしい話であるが、しかし倉科の言う通りなのだ。ただでさえ出入りする際の手続きが複雑だったアンダープリズンは、さらに手続きが複雑となり、対象の事件を資料として国に提出。そこで認証されて初めて出入りが許可されるようになった。毎日のように詰め所で時間を潰していた頃が懐かしい。もっとも、ごくごく稀に連絡を取る楠木は、大分負担が減って楽になったらしいが。

「とにかく、先月からもう三件目っすよ。リア充爆発しろ――なんていうネットスラングだか何か知らないものを模倣して、本当に爆発させるとか意味が分からねぇっす」

 三件目の現場とやらは、この農道をひたすら走った先にあるらしい。これだけ街中から離れていれば、爆発音は聞こえなかったであろう。

「いい加減、国の連中が資料の提出を求めてくるだろう。あいつらが0.5係を解散させて、俺とお前さんに兼任で引き継がせているんだから、その辺りの判断くらいしっかりして欲しいもんだがなぁ。もういつでも提出できるように資料はできてる」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...