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第一話 コレクター【プロローグ】
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「くそ、ついてねぇなぁ……」
路地の両側は、建物の2階ほどの高さのある塀。目の前には見上げるほどの高さの壁。高層ビルに取り囲まれ、世間から取り残されてしまった小さなアンダーグラウンドから脱出する手立てを奪ったのは、まさか高層ビルの壁だとは。
「こっちだ!」
その声に振り返る。追っ手の数は明らかに増えていた。もう、坂田に逃げ場はないと察したのか。路地の向こう側からゆっくりと集団が歩いてくる。その先頭には、名前のごとく髪を銀に染めた長髪の男の姿があった。両手、首元にはシルバーアクセサリーが光る。銀山だった。
「坂田ちゃん。やってくれたねぇ。お前なら、いつか俺に牙をむくんじゃねぇかって思ってたけどよ、まさかこんな形で歯向かってくれるとは――やるじゃない」
ここから脱する手立てはないか。考えながらも、銀山の言葉に反応を示す坂田。
「言っとくが、俺はお前の下についたつもりはねぇ。勝手にお前らが俺に絡んできただけだろ?」
「へぇ……いつも楠野と一緒にいるから、てっきりお前は俺の身内だと思っていたんだけど」
楠野という男は、幼い頃からの腐れ縁だった。彼は例外として、坂田は集団での行動を好まない。特に他人と群れることを良しとしなかった。このアンダーグラウンドに出入りするようになった時も1人だった。今はチームの溜まり場となってしまった【グラウンドゼロ】という店だって、元は坂田が好んで居座っていた店だ。
「あいつとは付き合いが長いんだよ。あんたらと違ってな。まさか、こんなところで再会することになるとは思わなかったが」
居場所がない。それは、この街に集まってくる人間に共通している点なのかもしれない。世の中に息苦しさを覚え、自分の居場所を求めた人間が集まる街。雨立街。まるで水を失った魚が水を求めて集まったような街。元より似たり寄ったりの楠野と、坂田がこの街で再会したのは、もはや必然だったのかもしれない。もっとも、余計なおまけが勘違いでついてきてしまったわけだが。坂田はこれを機会とばかりに言葉を連ねる。かねてよりの悪友――その悪友が属しているグループをまとめている男だからこそ、これまでぐっと堪えてきたのだが、我慢の限界というものがある。坂田は続けた。
「ちなみに【グラウンドゼロ】のマスターも迷惑そうだったぜ。お前らみたいな質の悪い連中に溜まり場にされてよ。まぁ、この街で商売するってことは、それなりの覚悟があるんだろうが、ガキは金も落とさねぇからな」
坂田の言葉を鼻で笑うと、すっと手を差し出す銀山。近くにいた男が、金属バットを手渡した。
路地の両側は、建物の2階ほどの高さのある塀。目の前には見上げるほどの高さの壁。高層ビルに取り囲まれ、世間から取り残されてしまった小さなアンダーグラウンドから脱出する手立てを奪ったのは、まさか高層ビルの壁だとは。
「こっちだ!」
その声に振り返る。追っ手の数は明らかに増えていた。もう、坂田に逃げ場はないと察したのか。路地の向こう側からゆっくりと集団が歩いてくる。その先頭には、名前のごとく髪を銀に染めた長髪の男の姿があった。両手、首元にはシルバーアクセサリーが光る。銀山だった。
「坂田ちゃん。やってくれたねぇ。お前なら、いつか俺に牙をむくんじゃねぇかって思ってたけどよ、まさかこんな形で歯向かってくれるとは――やるじゃない」
ここから脱する手立てはないか。考えながらも、銀山の言葉に反応を示す坂田。
「言っとくが、俺はお前の下についたつもりはねぇ。勝手にお前らが俺に絡んできただけだろ?」
「へぇ……いつも楠野と一緒にいるから、てっきりお前は俺の身内だと思っていたんだけど」
楠野という男は、幼い頃からの腐れ縁だった。彼は例外として、坂田は集団での行動を好まない。特に他人と群れることを良しとしなかった。このアンダーグラウンドに出入りするようになった時も1人だった。今はチームの溜まり場となってしまった【グラウンドゼロ】という店だって、元は坂田が好んで居座っていた店だ。
「あいつとは付き合いが長いんだよ。あんたらと違ってな。まさか、こんなところで再会することになるとは思わなかったが」
居場所がない。それは、この街に集まってくる人間に共通している点なのかもしれない。世の中に息苦しさを覚え、自分の居場所を求めた人間が集まる街。雨立街。まるで水を失った魚が水を求めて集まったような街。元より似たり寄ったりの楠野と、坂田がこの街で再会したのは、もはや必然だったのかもしれない。もっとも、余計なおまけが勘違いでついてきてしまったわけだが。坂田はこれを機会とばかりに言葉を連ねる。かねてよりの悪友――その悪友が属しているグループをまとめている男だからこそ、これまでぐっと堪えてきたのだが、我慢の限界というものがある。坂田は続けた。
「ちなみに【グラウンドゼロ】のマスターも迷惑そうだったぜ。お前らみたいな質の悪い連中に溜まり場にされてよ。まぁ、この街で商売するってことは、それなりの覚悟があるんだろうが、ガキは金も落とさねぇからな」
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