ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第一話 コレクター【事件編】

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「仕方ねぇな。俺が最初から引っかかってるところを教えてやるよ」

 意外な発言をしたのは坂田だった。警察の巌鉄でさえ分からない事件なのに、坂田は何かに気づいているというのか。

「引っかかる点? そういうのがあれば最初から言えよ」

 坂田の発言に対して、巌鉄はさほど驚いていないようだった。そんな巌鉄を尻目に、坂田はカウンターに座り、そして紫衣流が寝ていた時と同じ体制をとった。

「紫衣流はこう――正直、お行儀がいいとは言えない体制で寝てた。いいか? カウンターに突っ伏していたんだ。で、紫衣流の致命傷は?」

 カウンターに突っ伏したまま巌鉄に問う坂田の姿がシュールだった。

「腹部をぶすり――だ。そうか、もしガイシャがずっと寝てたのなら、腹を刺されるなんてことにはならないか」

 坂田が注目したのは、紫衣流が寝ていた時の体制だった。確かに、紫衣流はカウンターに突っ伏すようにして寝ていた。その状態で紫衣流の腹部を刺すことは不可能である。となると――。

「そう、だから紫衣流は少なくとも殺される時には起きてたんだよ。起きている状態で、真っ正面から刺されている。だが、俺と鐘が起きるほどの物音は立たなかった。もし、見知らぬ相手だったりすれば、紫衣流だって声のひとつくらい上げただろうな。で、はっきり言わせてもらうが、それだけの物音がしているのに寝ているほど、俺と鐘は間抜けじゃねぇ」

 殺害される瞬間、紫衣流は寝ていたのではなく起きていた。だが、坂田や楠野が起きるほどの叫び声はおろか、物音も立てていない。ということは。

「……犯人は穂積紫衣流と限りなく親しい人間。それこそ、懐に入られても黙っているような、心を許した相手ってことか」

 犯人は紫衣流の顔見知りである可能性が高い。それは最初から分かっていたことだったが、坂田の推測からさらに怪しい人間が絞り込める。

「やっぱり、ガイシャと交際していた銀山とかいう男から話を聞かないと駄目だな」

 巌鉄がぽつりと呟いた言葉に、楠野も乗っかった。

「血眼になって坂田を追いかけ回しているのも、そうすることで自分が容疑者から外れるようにするためってことですか?」

 楠野の言葉に坂田はなぜか笑いを噛み殺し「かもしれねぇなぁ」とだけ漏らした。

「今度は銀山って男を探さないと――だな。さっきとっ捕まえておけば良かった」

 今後の方針が決まろうとしているところで、坂田がカウンターのそばでしゃがみ込んだ。一点を見つめながら、誰に言うでもなく呟き落とす。

「こいつは……なんだ?」
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