ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第一話 コレクター【事件編】

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 確かカウンターの足元にはコンセントの挿し口があったはずだった。位置的にそこで坂田は何かを見つけたようだった。おそらくコンセントに挿さったままだったであろうそれを持って、こちらにやってくる坂田。自然と巌鉄も楠野のところに集まる。

「こいつは――コンタクトレンズの洗浄機じゃねぇか? これにコンタクトレンズを入れてよ、機械ごとコンセントに挿すんだよ。そうすると、勝手にコンタクトレンズを洗浄してくれるらしい。同じ課の女の子が同じようなものを使ってたから間違いないな」

 巌鉄は坂田の手元から新山のほうへと視線を向けた。

「マスター、こいつがいつからここにあったか分かるか? 持ち主が誰かとか」

 もし、警察の捜査の後にコンセントに挿されたものならば、持ち主は自然と決まってくる。それは、店の主人である新山だ。これまで彼以外、店に出入りできた人間はいないのだから。

「少なくとも私のじゃないわ――」

 実際に洗浄機を手に取って、まじまじと見つめたのち首を横に振る新山。あたかも最新式だと言わんばかりに小綺麗な洗浄機。そもそもそ、コンタクトレンズの洗浄機なんて初めて見た。時代は確実に進歩している。

「となると、鑑識の連中もこいつを見逃したってことか――。まぁ、あいつらも人間だからミスのひとつくらいする。もっとも、許されるミスじゃないけどな」

 巌鉄は明らかに大きな溜め息をひとつ。

「大体、持ち主が誰か分かったところでなんにもならねぇだろ?」

「まぁ、そうなんだけどよ。気にならないか?」

 もし、以前よりコンタクトレンズ洗浄機がコンセントに挿されていたのであれば、持ち主に心当たりがあった。

「それ――もしかしたら紫衣流のものかもしれないですね」

 紫衣流の目が悪いことは、仲間内では有名だった。整った顔立ちであり、また派手目な化粧をする紫衣流が、時たま眼鏡をかけている姿は、そのギャップもあって仲間内からもいじられていたのだ。

「あいつ、確か目が悪かったよな……」

 坂田がそう呟くかたわらで、実際にコンタクトレンズの洗浄機を開けてみる巌鉄。

「中にコンタクトレンズは残っていねぇな。持ち主はコンタクトレンズだけして、洗浄機をここに忘れたってことか?」

 もし、ここでコンタクトレンズを洗浄していた人物がいれば、それだけを忘れて帰るという器用なことはできないだろう。しかしながら、状況から考えると、ただ1人だけ、ここに洗浄機だけを置いてきぼりにしてしまう人物がいる。

「いや、多分だが忘れたってわけじゃねぇよ。持って帰ろうにも持って帰れなかったんだよ。ここで殺されたからな。だから、やっぱりこいつの持ち主は紫衣流だったに違いねぇ」
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