ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

文字の大きさ
38 / 178
第一話 コレクター【事件編】

31

しおりを挟む
「まぁな。多分、こう聞けば一発だぜ。つまり紫衣流がお前のところに何か忘れ物してないか――ってな」

 忘れ物。銀山と交際していた紫衣流は、確か銀山と一緒に暮らしていたはずだった。そこに何を忘れたというのだろうか。しかも、それを確認するだけで犯人が分かるとは――なぜだろうか。

「おーい、坂田ちゃーん! 中にいるんだろ? 俺とちょっとお話しをしようや!」

 こちらが対応もせず、また反応も見せないものだから、あちらとしては面白くないのだろう。やや苛立った様子の銀山の声が飛んでくる。

「あいつ――そろそろ自分の立場ってもんを教えてやらねぇとなぁ」

 坂田はぽつりと漏らし、店の玄関に向かって歩き出す。そして、新山はもちろんのこと楠野達に断りさえ入れずに、勝手に玄関の鍵を開けた。その途端、扉が勢い良く開き、銀山がなだれ込むかのごとく店内に飛び込んでくる。

「坂田ちゃぁぁぁん! ちょっと、調子乗りすぎなんじゃねぇかぁぁぁぁ?」

 取り巻きの連中は解散してしまったのか、どうやら銀山は1人のようだった。もしかすると、今回の騒動で銀山から離れるやつが出始めたのかもしれない。坂田は銀山の放った拳を受け流すと、腰を捻ってカウンターで拳を銀山のボディに叩き込んだ。それはもう見事な一撃だった。

「そりゃ、こっちの台詞だわ」

 もろにボディを喰らった銀山は、何歩か後退しつつよろめき、そしてその場に片膝をついた。正直、銀山は人の上に立てる器ではない。面倒だからそういうことにしていたが、誰もが好んで銀山の下についたわけではなかった。坂田がそうだったように、銀山が勝手に自分の配下に置いたつもりになって、それを吹聴して回っていただけなのだ。むろん、本気で銀山の下についていた連中もいるだろうが、実のところハリボテというのが実情だった。そんなお山の大将の髪の毛を掴むと、無理矢理に銀山を立たせる坂田。

「――銀山、ひとつだけ教えろ。最近、紫衣流が何かを家に忘れて出掛けなかったか? 答えろ」

 坂田から反撃されると思っていなかったのか。それとも一撃があまりに大きかったのか。銀山は抵抗する素振りも見せずに、声を絞り出すようにして答えた。

「め――眼鏡をケースごと忘れて出かけたな」

 その言葉を聞くと、銀山の髪を掴んだまま床に叩きつける坂田。バランスを崩した銀山は、無様にも床に顔をぶつけた。踏んだり蹴ったりの銀山の頭を踏みつける坂田。

「くくっ……くくくくっ」

 坂田は噛み殺すような笑い声を漏らす。笑い方、気味が悪いからやめたほうがいいと、何度か坂田に忠告したことがあった。しかし、どうやら矯正はされていないようだ。

「ひゃーっはっはっは!」

 甲高い声で発せられる坂田の笑い声に、一同は呆気に取られるだけ。ひとしきり笑った坂田は「そうかぁ、やっぱりなぁ……」と漏らし、さらにこう続けたのであった。

「まぁ、俺ならもうちょっとスマートに殺るけどなぁ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作
ミステリー
 窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。  事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。  不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。  これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。  ※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...