ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第一話 コレクター【解決編】

第一話 コレクター【解決編】1

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【1】

「坂田――それって、犯人が誰なのか分かったってことだよな?」

 相も変わらず薄暗い店内。いまだに銀山を足蹴にしたままの坂田に向かって巌鉄が問う。

「まぁな。そういうことになるだろうな」

 坂田はようやく銀山の頭から足をどけると、カウンター席へと腰をかける。坂田が逆らうとは思っていなかったのか、やられたい放題だった銀山は顔を起こすが、やや放心状態だった。いつもの銀山ならば坂田にくってかかりそうなものなのだが、そんな気配はない。何かに怯えているかのようだった。

「事件を簡単に整理してみろ。まず、犯人は雨立街に頻繁に出入りしていた人間だと思われる。そして、殺された女達を言葉巧みに誘い、油断しているところを刺して殺害。目玉をくり抜いて現場を立ち去っている」

 坂田は煙草をくわえながら続ける。まだ火は点けない。

「何よりも紫衣流の件。寝ていたはずの紫衣流は、他の犠牲者と同様に、腹を刺されて殺されたわけだ。つまり、殺される瞬間、紫衣流は起きていたと思われる。この状況で懐に潜り込み、抵抗されることなく腹部を刺されていることから、犯人は限りなく紫衣流に近い人物だと思われる」

 楠野は銀山のほうへと視線をやる。紫衣流に限りなく近い人物。それの筆頭として挙げられるのは銀山であろう。

「雨立街に出入りしていて、紫衣流に近い人物。これだけでも犯人は絞られるだろうな。ここでひとつあたりをつけておきたい問題がある。それは――本当に犯人は目玉をコレクションにしていたのかってことだ」

 コレクター。それはマスコミがつけた通り名のようなもの。綺麗に眼球だけがくり抜かれて持ち去れているため、そのように名付けられたのだろうが、実際に犯人がどのように眼球を取り扱ったのかは不明だ。

「でも、実際のところ現場に目玉は残されていなかった。持ち去ったと考えるのが自然だろ?」

 巌鉄の言葉に、ようやく煙草へと火を点ける坂田。つられて巌鉄も煙草に火を点けた。放心状態のままの銀山は、いまだに床に崩れ落ちたまま。その様子を心配したのか新山が「コーヒーでも飲む?」と声をかけた。銀山はゆるく首を横に振る。

「でも、どうやって持ち去る? タッパーでも持ってきてたのか? それとも目玉をポケットにでもねじ込んだ? そもそも、コレクションにするんだったら、それなりの準備が必要だろうし、その分荷物も増える。さすがにこんな街でも、事件の前後で荷物を持って徘徊するのは目立つだろうな。だが、そんな奴が目撃された話は聞かない。それに、紫衣流の一件から考えて、俺はこう思うんだよ。犯人が目玉をくり抜いた理由は――コレクションのためじゃないってな」
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