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二章 お悔やみ様の祟り
第三十一話
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「さおりん――」
葛西は思わず呟いた。動画はメールに埋め込まれているようで、静止画に再生マークが表示されている。それをタップすれば動画が再生されるわけであるが、その静止画に制服姿の沙織らしき人物の姿が浮かび上がっていたのである。
再生しない理由などなかった。江崎や佳代子のスマートフォンにも同じものが送られているのだろうが、二人は自分のスマートフォンではなく、葛西のスマートフォンを覗き込む。幼馴染が映った動画を一人で観るのは躊躇われたのであろう。なんせ、このメールの前に送られてきたメールの内容が、まるで沙織が殺されたことを示唆するようなものだったのだから――。
タップをすると動画の再生が始まった。場所はどこかの建物の中のようである。沙織の奥にトタンの壁らしきものが見える。また、画面に見切れるかのように見えているのは廃材だろうか。切り口がバラバラの木材が積み上げられていた。そして、時間帯は夜なのであろう。薄明かりが辛うじて沙織らしき人物の姿を捉えている。画質はかなり悪い。
沙織はじっと画面のほうを見ている。画面が沙織のほうへと近付き、映っている人物が間違いなく沙織であると葛西は確信する。その表情は少しばかり引きつっているかのように思えた。
「嫌――。来ないで」
沙織が小さく漏らし、後退りをする。何かに躓いたのか、その場に尻餅をついた。画面の向こうからは、沙織ではない何者かの荒い息遣いが聞こえた。こうして動画が撮影されているのだから、少なくとも画面の向こう側には、沙織以外にもう一人の人物がいたことになる。
「誰か、助けて……」
荒い息遣いが沙織へと近付き、それから逃れるかのように、尻餅をついたままの状態でも後退りを続ける沙織。その呟きは誰かに届いたのだろうか。いいや、届いていないに違いない。こうして動画を見ている葛西達以外には。
助けを求めるかのごとく、沙織が慌ててスカートのポケットからスマートフォンを取り出した。スカートにもポケットがついているものなのか――。そんなことを考えつつも、葛西は画面を凝視する。沙織がスマートフォンを取り出した際に、恐らくディスプレイに明かりが反射したのであろう。一瞬だけ、スマートフォンを持った沙織の手元が光った。
画面の外から、ぬっと手が伸びて、沙織の肩へと伸びる。その恐怖に強張った沙織の顔が画面に大きく映し出されて、動画は終了してしまった。
葛西は思わず呟いた。動画はメールに埋め込まれているようで、静止画に再生マークが表示されている。それをタップすれば動画が再生されるわけであるが、その静止画に制服姿の沙織らしき人物の姿が浮かび上がっていたのである。
再生しない理由などなかった。江崎や佳代子のスマートフォンにも同じものが送られているのだろうが、二人は自分のスマートフォンではなく、葛西のスマートフォンを覗き込む。幼馴染が映った動画を一人で観るのは躊躇われたのであろう。なんせ、このメールの前に送られてきたメールの内容が、まるで沙織が殺されたことを示唆するようなものだったのだから――。
タップをすると動画の再生が始まった。場所はどこかの建物の中のようである。沙織の奥にトタンの壁らしきものが見える。また、画面に見切れるかのように見えているのは廃材だろうか。切り口がバラバラの木材が積み上げられていた。そして、時間帯は夜なのであろう。薄明かりが辛うじて沙織らしき人物の姿を捉えている。画質はかなり悪い。
沙織はじっと画面のほうを見ている。画面が沙織のほうへと近付き、映っている人物が間違いなく沙織であると葛西は確信する。その表情は少しばかり引きつっているかのように思えた。
「嫌――。来ないで」
沙織が小さく漏らし、後退りをする。何かに躓いたのか、その場に尻餅をついた。画面の向こうからは、沙織ではない何者かの荒い息遣いが聞こえた。こうして動画が撮影されているのだから、少なくとも画面の向こう側には、沙織以外にもう一人の人物がいたことになる。
「誰か、助けて……」
荒い息遣いが沙織へと近付き、それから逃れるかのように、尻餅をついたままの状態でも後退りを続ける沙織。その呟きは誰かに届いたのだろうか。いいや、届いていないに違いない。こうして動画を見ている葛西達以外には。
助けを求めるかのごとく、沙織が慌ててスカートのポケットからスマートフォンを取り出した。スカートにもポケットがついているものなのか――。そんなことを考えつつも、葛西は画面を凝視する。沙織がスマートフォンを取り出した際に、恐らくディスプレイに明かりが反射したのであろう。一瞬だけ、スマートフォンを持った沙織の手元が光った。
画面の外から、ぬっと手が伸びて、沙織の肩へと伸びる。その恐怖に強張った沙織の顔が画面に大きく映し出されて、動画は終了してしまった。
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