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三章 親と子
第十六話
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葬儀は寺にて行われたため、四十九日がすぎるまでの沙織の遺骨は、おばさんの家にあるのだろう。きっと簡素な壇が作られ、生前の写真と共に鎮座しているに違いない。彼女はどこの墓に入るのであろうか――ふと、そんなことを思ってしまった。
「そうか。おばさんも大変だな……」
沙織の母親が忙しいことなど百も承知。よく自分達のために時間を割いてくれたものだ。本当は忙しくて仕方がないだろうに。
「あぁ、そこまで長居はできないだろうし、おばさんの心情を考えると、ストレートに沙織の死のことを尋ねるわけにもいかない。その辺りは俺が上手いことやってみるから任せて欲しい」
おばさんは今でも忙しい。そして、何よりも娘の死に傷付いている。幼馴染だからと、せっかく時間を割いてくれたおばさんに対して、娘の死に関してのことを根掘り葉掘り訊くのはデリカシーがなさすぎる。そのようなことを考慮して話すのであれば、葛西の言う通り、彼に任せてしまったほうが良さそうだ。佳代子は天然ゆえに何を言い出すか分からないし、江崎は江崎で頭の良い話運びができないことを自覚していた。
「――そうだ。例の動画に関して、俺なりに調べてみたんだ」
江崎がナゲットをソースに浸していると、葛西が思い立ったかのようにスマートフォンを取り出した。江崎が話を持って行くまでもなく、話題は例の動画の話に移ってくれたようだ。
「これ、どうやら動画を撮影した媒体から、直接送られたものではないらしい」
それを聞いて、江崎は佳代子のほうへと視線を移した。佳代子の頭の上にも、江崎と同様に疑問符が幾つも浮かんでいた。
「えーっと、例えばこれをスマートフォンで撮影したとしよう。それを直接誰かにメールで添付した場合、ここまで画質が悪くなることはないんだ」
葛西はそう言うと、スマートフォンをテーブルの上に置き、沙織の動画を再生させた。音声は切ってあるようだが、確かに画質が良いとは言えない。動きも滑らかではなかった。
「では、ここまで画質が悪くなったのはどうしてか? 断定はできないが、画質が悪くなる原因で真っ先に思いついたのは転送だ――。メールに添付される動画は、メールの容量サイズに圧縮されて送信される。だから、基本的に画質も劣化してしまうものなんだ。これをさらにメールに添付しようとすると、またメールの容量サイズに圧縮されてしまう。よって、俺達に送られてきた動画は、送信主の他に媒体を介して送られている可能性が高い」
改めて佳代子のほうを見ると、神妙な面持ちで腕を組み「うぬぬぬぬぬ――」と唸っていた。疑問符が飽和して破裂する音が聞こえてきそうだ。つまりのところ、佳代子や江崎には葛西が何を言っているのかさっぱりなのである。
「そうか。おばさんも大変だな……」
沙織の母親が忙しいことなど百も承知。よく自分達のために時間を割いてくれたものだ。本当は忙しくて仕方がないだろうに。
「あぁ、そこまで長居はできないだろうし、おばさんの心情を考えると、ストレートに沙織の死のことを尋ねるわけにもいかない。その辺りは俺が上手いことやってみるから任せて欲しい」
おばさんは今でも忙しい。そして、何よりも娘の死に傷付いている。幼馴染だからと、せっかく時間を割いてくれたおばさんに対して、娘の死に関してのことを根掘り葉掘り訊くのはデリカシーがなさすぎる。そのようなことを考慮して話すのであれば、葛西の言う通り、彼に任せてしまったほうが良さそうだ。佳代子は天然ゆえに何を言い出すか分からないし、江崎は江崎で頭の良い話運びができないことを自覚していた。
「――そうだ。例の動画に関して、俺なりに調べてみたんだ」
江崎がナゲットをソースに浸していると、葛西が思い立ったかのようにスマートフォンを取り出した。江崎が話を持って行くまでもなく、話題は例の動画の話に移ってくれたようだ。
「これ、どうやら動画を撮影した媒体から、直接送られたものではないらしい」
それを聞いて、江崎は佳代子のほうへと視線を移した。佳代子の頭の上にも、江崎と同様に疑問符が幾つも浮かんでいた。
「えーっと、例えばこれをスマートフォンで撮影したとしよう。それを直接誰かにメールで添付した場合、ここまで画質が悪くなることはないんだ」
葛西はそう言うと、スマートフォンをテーブルの上に置き、沙織の動画を再生させた。音声は切ってあるようだが、確かに画質が良いとは言えない。動きも滑らかではなかった。
「では、ここまで画質が悪くなったのはどうしてか? 断定はできないが、画質が悪くなる原因で真っ先に思いついたのは転送だ――。メールに添付される動画は、メールの容量サイズに圧縮されて送信される。だから、基本的に画質も劣化してしまうものなんだ。これをさらにメールに添付しようとすると、またメールの容量サイズに圧縮されてしまう。よって、俺達に送られてきた動画は、送信主の他に媒体を介して送られている可能性が高い」
改めて佳代子のほうを見ると、神妙な面持ちで腕を組み「うぬぬぬぬぬ――」と唸っていた。疑問符が飽和して破裂する音が聞こえてきそうだ。つまりのところ、佳代子や江崎には葛西が何を言っているのかさっぱりなのである。
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