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六章 お悔やみ様は誰だ
第二話
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葛西が言うと、江崎が「飯を作って貰おうなんて思ってるから食いそびれんだよ」と茶化した。父親と二人で暮らしている江崎は、セルフサービスが当たり前になっているのだろう。
「もし良かったら、たっちんも半分食べる? 朝からお好み焼き丸々一枚はちょっとね――」
起きがけに、油をふんだんに使って焼いたお好み焼きは些かへヴィーである。それに、どう考えたって学校に到着するまで食べきれる気がしない。そうと言って、せっかく作って貰ったものだから捨てるわけにもいかないし、正直なところどうしようかと思っていたところだ。佳代子は葛西の返事も聞かずに、包み紙の上からお好み焼きを半分にすると、包み紙ごとふたつに引き離して、片方を葛西へと手渡した。
「あ、あぁ――。ありがとう」
葛西が少しばかり困ったかのような表情を浮かべてはいたが、ここは道連れになって貰おう。
「朝っぱらからお好み焼き片手に登校とか、どんな絵面なんだよ。これ」
お好み焼きを手に持つ二人を江崎がさらに茶化し、葛西が負け惜しみと言わんばかりに「いや、最高の焼き加減だぞ」と、お好み焼きを頬張ってみせた。きっと、佳代子一人では食べきれないことを分かっていながら、葛西が見せてくれた優しさなのであろう。
ほんの少しばかり、いつもの三人に戻れたような気がした。ちょっと前までは、こうして三人で学校に向かい、学校の近くの寮で沙織と合流して――。ただ、やはり沙織はいない。どれだけ三人が気丈に振る舞ってみたところで、沙織はもういないのだ。
「――どうした? かぁこ」
二人が普段通りに振る舞ってくれているのに、どうしても心にぽっかりと空いた穴は埋まらない。きっとそれは、表情にも出ていたのであろう。少し茶化しすぎたとでも思ったのか、江崎が顔を覗き込んできた。
「ううん、なんでもないよ……」
そう答えると、それ以上は聞かずに「そうか」と、話を終わらせてくれる江崎。葛西は何も言わずにお好み焼きを頬張っていた。何往復目になるか分からぬ通学路は、沙織がいないこと以外は何ひとつ変わらなかった。
しばらく生徒を受け入れなかった学校は、なんだか寂れたように思えた。それでも、登校をする生徒達の姿は、徐々に日常へと戻ろうとしているような気がする。見たくないものを見ないようにして、無理矢理に日常を取り繕おうとしているように見えた。
「もし良かったら、たっちんも半分食べる? 朝からお好み焼き丸々一枚はちょっとね――」
起きがけに、油をふんだんに使って焼いたお好み焼きは些かへヴィーである。それに、どう考えたって学校に到着するまで食べきれる気がしない。そうと言って、せっかく作って貰ったものだから捨てるわけにもいかないし、正直なところどうしようかと思っていたところだ。佳代子は葛西の返事も聞かずに、包み紙の上からお好み焼きを半分にすると、包み紙ごとふたつに引き離して、片方を葛西へと手渡した。
「あ、あぁ――。ありがとう」
葛西が少しばかり困ったかのような表情を浮かべてはいたが、ここは道連れになって貰おう。
「朝っぱらからお好み焼き片手に登校とか、どんな絵面なんだよ。これ」
お好み焼きを手に持つ二人を江崎がさらに茶化し、葛西が負け惜しみと言わんばかりに「いや、最高の焼き加減だぞ」と、お好み焼きを頬張ってみせた。きっと、佳代子一人では食べきれないことを分かっていながら、葛西が見せてくれた優しさなのであろう。
ほんの少しばかり、いつもの三人に戻れたような気がした。ちょっと前までは、こうして三人で学校に向かい、学校の近くの寮で沙織と合流して――。ただ、やはり沙織はいない。どれだけ三人が気丈に振る舞ってみたところで、沙織はもういないのだ。
「――どうした? かぁこ」
二人が普段通りに振る舞ってくれているのに、どうしても心にぽっかりと空いた穴は埋まらない。きっとそれは、表情にも出ていたのであろう。少し茶化しすぎたとでも思ったのか、江崎が顔を覗き込んできた。
「ううん、なんでもないよ……」
そう答えると、それ以上は聞かずに「そうか」と、話を終わらせてくれる江崎。葛西は何も言わずにお好み焼きを頬張っていた。何往復目になるか分からぬ通学路は、沙織がいないこと以外は何ひとつ変わらなかった。
しばらく生徒を受け入れなかった学校は、なんだか寂れたように思えた。それでも、登校をする生徒達の姿は、徐々に日常へと戻ろうとしているような気がする。見たくないものを見ないようにして、無理矢理に日常を取り繕おうとしているように見えた。
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