160 / 191
最終章 お悔やみ様と僕らの絆
第十五話
しおりを挟む
「俺達にメールを送ったのは、あくまでもとっかかりさ。こんな田舎だから、俺達のクラスにお悔やみ様からのメールが届けば、方々に噂が拡散する。俺達のクラスにいるのは地元の人間ばかりじゃないからね。噂が広まれば、さおりんを乱暴した本人の耳にまで届くかもしれない。そして、本人に罪の意識が少しでもあれば……自分のやってしまったことによって、一人の女性が死んでしまったとなれば、自ら出頭してくれるかもしれない。先生はそう考えたんだ」
悪い言い方をすれば、江崎達は糸井先生に利用されてしまったということか。沙織の死を起点にして、まるで何者かの意思であるかのごとく起きてしまった野球部の事故――。そこに糸井先生が便乗しない理由などなかった。
「きっと、お悔やみ様という伝承になぞらえてメールが送られてきたのは、さおりんを乱暴した人間の恐怖心をあおる目的があったんだと思う。単純に噂が拡散するだけでは、さおりんを乱暴した犯人を追い詰めることはできない。けれども、そこにお悔やみ様というスパイスを加えることで、得体の知れない――それこそ非科学的な存在を演出することができる。言ってしまえば、先生はお悔やみ様までをも利用したのさ」
沙織は母親の愛情を確かめるために、ありもしなかった事件をでっち上げた。彼女本人は、このでっち上げの事件を拡散するつもりはなく、母親に送るためだけにでっち上げた。しかし、母親からの反応がないことに衝動的な自殺に走ってしまい、命を落としてしまった。
一方、母親は何者かに乱暴されたがゆえに沙織が命を絶ったものだと思い込んでしまった。そして、偶然にも野球部の事故が起きてしまったことにより、お悔やみ様の名前を使って犯人を探し出すことを思い付いてしまった。
――つくづく不器用だなと思う。回りくどい方法で母親の愛情を確かめようとした沙織。そして半ば逆恨みでお悔やみ様を演じた先生。どちらも不器用で、ほんの少しのすれ違いから、こんな大きな事件が起きてしまったのである。
「言っておくけど、ここまでは俺の想像に過ぎない。実際はどうだったのか――それは本人の口から聞きたいんだけど、話して貰えないだろうか? 糸井先生、この通りだ」
想像だけでもの言うことに、葛西もとうとう限界へと達したようだった。糸井先生に向かって頭を深々と下げる。
またしても静寂が訪れたが、その中で糸井先生は静かに頷いたのであった。
――事件の全貌がいよいよ明かされる。
悪い言い方をすれば、江崎達は糸井先生に利用されてしまったということか。沙織の死を起点にして、まるで何者かの意思であるかのごとく起きてしまった野球部の事故――。そこに糸井先生が便乗しない理由などなかった。
「きっと、お悔やみ様という伝承になぞらえてメールが送られてきたのは、さおりんを乱暴した人間の恐怖心をあおる目的があったんだと思う。単純に噂が拡散するだけでは、さおりんを乱暴した犯人を追い詰めることはできない。けれども、そこにお悔やみ様というスパイスを加えることで、得体の知れない――それこそ非科学的な存在を演出することができる。言ってしまえば、先生はお悔やみ様までをも利用したのさ」
沙織は母親の愛情を確かめるために、ありもしなかった事件をでっち上げた。彼女本人は、このでっち上げの事件を拡散するつもりはなく、母親に送るためだけにでっち上げた。しかし、母親からの反応がないことに衝動的な自殺に走ってしまい、命を落としてしまった。
一方、母親は何者かに乱暴されたがゆえに沙織が命を絶ったものだと思い込んでしまった。そして、偶然にも野球部の事故が起きてしまったことにより、お悔やみ様の名前を使って犯人を探し出すことを思い付いてしまった。
――つくづく不器用だなと思う。回りくどい方法で母親の愛情を確かめようとした沙織。そして半ば逆恨みでお悔やみ様を演じた先生。どちらも不器用で、ほんの少しのすれ違いから、こんな大きな事件が起きてしまったのである。
「言っておくけど、ここまでは俺の想像に過ぎない。実際はどうだったのか――それは本人の口から聞きたいんだけど、話して貰えないだろうか? 糸井先生、この通りだ」
想像だけでもの言うことに、葛西もとうとう限界へと達したようだった。糸井先生に向かって頭を深々と下げる。
またしても静寂が訪れたが、その中で糸井先生は静かに頷いたのであった。
――事件の全貌がいよいよ明かされる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
57
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる