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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

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 その言葉は切実であり、また投げやりのようにも聞こえた。全てを安藤に任せるということは、坂崎の親友である本田自身も、その決定に従うということなのか。

「安藤君、とりあえず決着をつけておいたほうがいいわ。この状況でもロスタイムが成立すれば【ナンバーキーパー】の勝ちなんだから」

 誰もが安藤の説に納得してくれたのであろうか。坂崎本人が反論してこないところを見るに、安藤の言っていることは図星なのだろうが。

 安藤、小雪、芽衣、香純、小宮山、舞、坂崎、星野崎、本田、真綾。

 ――伊勢崎が死んでしまったから、25人いたクラスメイトは半分以上に減ってジャスト10人。ここから坂崎が退場すると、残りは9人。それだけ、ここまでの事件とゲームで大勢のクラスメイトが死んだことになる。

 こんな馬鹿げたことが、いつまで続くのだろうか。虫ケラのように人が死んで当然のような世界が、どこまで許されるのだろうか。誰か教えて欲しい。

「誰か異論はないかい? この答えで本当にいいんだね?」

 安藤はあえて周囲の人間へと問う。全てを背負うのは嫌だったし、他の人達も納得した上で答えを出したい。

「その話を聞いて、まだ越井と委員長を疑えってほうが無理だよな――。なぁ、なんかの間違いってことは……ないんだろうなぁ」

 本田がぽつりと呟き落とす。その視線は、あえて坂崎からそらされているような気がした。親友が敵となり、そして自分を欺こうと――殺そうとしたのだ。本田の心境を思うと言葉が出ない。

「ぼ、僕は安藤より先に真相にたどり着いてたけどな――。まぁ、今回は安藤に花を持たせてやるよ」

 こんな状況なのに、何を張り合っているのだろうか。どこまで星野崎が真相にたどり着いていたのかは定かではないが、特に噛み付くつもりもないようだ。

 小雪と舞は、安藤のほうに向かって強く頷いたのみ。改めて疑いの晴れた小宮山は安堵の溜め息を漏らすばかりだ。

「こうなったら、真綾も覚悟はできてるよ」

 真綾が安藤に託すのを見たからか、とってつけたかのごとく香純も頷いた。

「安藤君――」

 芽衣の言葉に頷く。どうやら異論はないようだ。これにて、遠慮なく【ナンバーキーパー】を白日の下に晒せそうだ。何よりも、思っていた以上に本田の物分かりが良かったことこそ、結論への決め手だったのかもしれない。

「今回のゲームで【ナンバーキーパー】をしていたのは――」

 教室が固唾を飲んだ。アンジョリーヌ達も固唾を飲んだ。いいや、日本中が固唾を飲み、この状況を見守っているのかもしれない。
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