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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

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「僕はずっと勘違いをしていたのかもしれない。委員長とはなんなのか、クラスをまとめるとはどういうことなのか――。それが、やっと分かったような気がする。今からでも頑張るよ」

 彼は委員長の器ではないし、今現在も実質上は本田が仕切っているようなものだ。どれだけ努力しようとも人の資質というものは変わらないだろうから、彼が委員長の座に戻ることはないだろう。ただ、その意気込みに対して「うん、頑張ってよ」と安藤は返してやる。余計なことを言ってやる気を削ぐよりかは遥かにマシだろう。

「――俺は、俺自身はこの表舞台から姿を消した男だから、なにができるのかは分からない。でも、表舞台から追放された人間だからこそ力になれることがあるかもしれない。自己満で申し訳ないけど、俺は罪滅ぼしのためにみんなの役に立ちたい。それで罪が消えるわけじゃないけど、これからを背負う第一歩にしたい」

 そう呟く坂崎の姿に、安藤はなんとも理不尽なものを感じた。アベンジャーに選出されるには、それなりの理由があったのかもしれない。けれども、坂崎はやりたくて――殺したくて、あれだけのクラスメイトを殺したわけではない。確かに復讐をしたいという気持ちはあったのかもしれないが、殺したいとまでは思っていなかったのだろう。誰も坂崎を責められない。責める権利なんてない。でもかけてやる言葉も見つからない。一同は坂崎の言葉に、大きく頷いてやることしかできなかった。

「や、役に立てるか分からないけど、せ、精一杯頑張ろうと思います」

 きっと自分の順番が回ってくるまで、どんなことを言おうかずっと迷っていたのだろう。細々と震える声でアピールした舞であったが、坂崎の後というのが悪かったか。彼の余韻のせいで、なんだかぼやけて聞こえてしまった。

「お互い、頑張りましょう」

 しっかりとその辺りのフォローに回る芽衣はさすがである。明確なカースト制度に縛られていたクラスが、着実にひとつになろうとしていた。カーストも身分も関係なく、ひとつの目標に向かって動き出そうとしているのだ。

「俺は見ての通り頭は悪いし、能があるとすれば喧嘩くらいだけどよ、今回のことはマジで腹立ってんだ。法案のモデルケースだかなんだか知らないけどよ、もうこれ以上、俺達の人生をぶっ壊されたくねぇし、見世物にもされたくねぇ。絶対に帝国政府をぶっ潰す」

 本田がそう言うと、何人かが同意の意味を込めてか大きく頷いた。安藤もまた、そのうちの一人だった。
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