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#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】

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「姫乙、アベンジャーの今回の望みはどんなものになるのかしら? なんとなく分かりきっていることだけど、念のために聞かせて」

 アベンジャーにはご褒美が与えられる。けれども、どんなことを望んでも、最終的には全滅するように姫乙が持って行くのだろう。聞くだけ無駄のような気もするのだが、それでも確認だけはしておくべきなのかもしれない。

「えぇ、もちろん諸君らには発表させていただきますよぉ。それにしても今回のアベンジャーはぁ、実に面白いことを望んでくれたものですぅ」

 もはや、セルフドラムロールもなければ特別な演出もない。ただ茶封筒を取り出すと、そこから紙切れを引っ張り出した。完全に業務的になってしまっている。もっとも、楽しんでいるような表情を見せられるのも、それはそれて面白くないが。

「今回のアベンジャーの願い。お望み通りにぃ、発表させていただきますぅぅぅぅ」

 その言葉に辺りが静まり返り、アンジョリーヌを筆頭としたテレビクルーが、その瞬間を撮影するために固唾を飲む。

「それではぁ、今回のアベンジャーの望み。それは、もしアベンジャーが【糾弾ホームルーム】を切り抜けた場合、この2年4組を法案モデルとする行為を止めること――です」

 姫乙はそこまで読み上げると、大きく溜め息を漏らした。その望みがあまりにも予想外すぎて、一瞬理解に苦しんだ。

「それって、真綾達がアベンジャーの正体を間違って答えたら、全部が終わるっ――」

「まぁ、諸君らは爆発しますけどねぇ。アベンジャーの望み通り、2年4組が法案のモデルケースから外れるということは叶えましょう。しかしぃ、やはり爆発しないとぉ。アベンジャーが何を考えて、こんなことを願うのかは知りませんがぁ、もうちょっと姫乙のことを分かって欲しかったですねぇ。この姫乙がぁ、そんな都合の良いことなど許すはずがないでしょうがぁぁぁ」

 真綾の言葉を姫乙が遮る。最終的な着地点は分かっていたが、今回のアベンジャーはこれまでのアベンジャーと違い、2年4組の救済を望んだ。もちろん、それは姫乙によってご丁寧にも潰されてしまうわけだが、少しだけ救われたような気がした。アベンジャーに変な親近感を抱いたといっても過言ではないだろう。

「結局のところ、私達に残されている道はひとつだけ。今回もアベンジャーの正体を暴き、この【糾弾ホームルーム】を切り抜けるだけよ」

 芽衣の言葉が安藤を現実へと引き戻した。安藤がアベンジャーに親近感を抱こうが、救われたような気がしようが、根本的な部分は変わっていない。今回もまたアベンジャーの正体を暴かねばならないのだ。
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