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#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】

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「続いて視聴覚室を爆破した理由、そのに。爆発を起こすことで越井さんの死を偽装するため。これは説明するまでもないわね?」

 誰に確認するわけでもなく漠然と放たれた芽衣の言葉に、小さな溜め息が返事をした。この急展開に溜め息のひとつやふたつくらい当然なのかもしれない。そんなことを考えつつ、安藤は自分の頭の中を整理する。

 香純は鏡を使ったトリックにより、死を偽装することに成功した。けれども、そのままでは遅かれ早かれ死の偽装がばれてしまう。そもそも香純は死んでいないのだから、現場に遺体は残らない。遺体のふりをしても鑑識官に笑われて終わりだ。ゆえに、香純の死を偽装するには、遺体を確認できない状況を作り出す必要があった。その手段こそが、視聴覚室の爆破だったのだ。遺体が爆発で吹き飛んだとなれば、鑑識官達も遺体を調べようがない。実際にその場に遺体があろうがなかろうがだ。だからこそ、視聴覚室で見つかった香純の髪の毛は、さぞ値千金の価値があったことだろう。

 全て芽衣の手の平の上。彼女の思惑通りに事件が起き、思惑通りに展開した。敵を欺くには味方からと言うが、これをずっと芽衣一人で抱えていたと思うと、なんだか申し訳なく思えてしまう。なんとも大きなものを背負わせてしまったものだ。それを涼しい顔で背負い続けた芽衣も芽衣であるが。

「視聴覚室を爆破した最後の理由。爆発に乗じて、その付近にある監視カメラの映像を吹き飛ばしてしまいたかった。姫乙が監視カメラで何が起きたのか確かめようとするのは想定済みだった。だからこそ、現場周辺の監視カメラを爆破し、実際の私達の動きを悟られないようにしたのよ」

 芽衣の最後の目的は、爆発によって周辺に設置された監視カメラを破壊することにあった。どれだけうまい具合にトリックを仕掛けても、それが監視カメラで確認できては意味がない。だからこそ、監視カメラを破壊し、その前後の映像を確認できなくしたのだ。

「ただ、実際に監視カメラがどんな形で映像を拾っているか分からなかったから、それなりに気を遣ったわ。カメラの映像をリアルタイムでモニターのほうに飛ばし、そっちのほうで録画しているタイプもあるから。まぁ、そうなってもいいように、時間通りに監視カメラのところで一芝居打たさてもらったけどね。私達はもちろん越井さんもね。馬鹿みたいな話よね。あらかじめ撮影した映像でアリバイを作った私がやっていたことは、あらかじめ撮影した映像通りに芝居を打つことだった――なんて」
 
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