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#4 放課後殺人ショー【エピローグ】

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「ブラボォォォォォォッ! いやぁ、手前味噌で申しわけありませんがぁ、実に良くできたCMだとは思いませんかねぇ?」

 会議室にはずらりと各省の大臣が顔を並べている。天皇様にも声をかけたのであるが、しかし出席は断られてしまった。

「――姫乙大臣。この度は例の法案の効果がどれだけ出たのかを話していただけるのではなかったのかね?」

 どこからかそんな声が上がり、姫乙は小さく頷いた。もちろん、その話をするために、各省の皆さんには集まってもらったのだ。もちろん、これから放映される予定のCMにだって意味がある。

「あの【糾弾ホームルーム】から丸一年が経過しましたぁぁ。あれが全国に与えた衝撃は絶大なものがありましてぇ、昨年成立した復讐法を全国に広める良いきっかけにもなりましたよ」

 あの【糾弾ホームルーム】から――表向きでは姫乙が敗北したことになっているセンセーショナルな事件から一年。生き残った彼らは元気だろうか。

「しかし姫乙大臣。話によると復讐法は成立したが、いまだに施行された実例がないとか。おおがかりなことをやってまで法案を成立させておきながら、これでは怠慢と言われても仕方がありませんよ」

 またしてもどこかから上がった声は、姫乙に対して批判的なものだった。もっとも、その言葉通り復讐法は一度も施行されていないし、一年前のように【糾弾ホームルーム】が行われることにもなっていない。しかし、それでいいのである。

「いえいえ、怠慢ではありませんよぉ。お手元に配らせていただいた資料に目を通してはいただけましたかぁ?」

 姫乙の言葉につられるようにして、一斉に紙の擦れる音が辺りに響く。人に言われるまで資料に興味すら抱かないのは、良くも悪くも大日本帝国政府のお偉いさん方だといえよう。

「こちら、全国放送にて【糾弾ホームルーム】生中継される前年のデータと、その後のデータの比較になりますぅ。まずぅ、各学校が把握していた、いじめの認知件数。おおよそ32万件だったのに対して、極端に1万件未満にまで激減しましたぁ。続いて、いじめが原因となる自殺者の人数――かつては右肩上がりで320人まで増加しましたがぁ、あの【糾弾ホームルーム】の後は一桁台にまで減りましたぁ。これこそ、復讐法が成立したからこその結果だと私は考えておりますぅ」

 姫乙の言葉にざわめく会議室。特にいじめ問題に頭を悩ませていた文部科学省の大臣などは寝耳に水であろう。なんせ、革命省の大臣が横槍を入れたわけであるから。
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