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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【プロローグ】

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 姫乙の言葉を噛み砕き、そしてゆっくりではあるが確実に飲み込んでいく。一言一句聞き逃さぬように神経を集中させた。どこに状況を打破する糸口が隠されているか分からない。前回の事件では、姫乙自身がわざとヒントを与えるような真似をしているだけに、嫌でも彼の一挙手一投足には注目が集まってしまうことだろう。

「ですのでぇ、宣言できる限度――3つの数字を一度に宣言した方にはぁ【アントニオ】というルールが適用されることにしますぅ」

 その絶妙なネーミングに、ただでさえ静かだった教室が、なおさら静寂に包まれる。静寂が耳に痛いとは、今のような状況を指すのであろう。その空気を察したのか、姫乙は辺りを見回すと咳払いをして、静寂を打ち破ろうとばかりに声を張り上げた。

「――元気ですかっ!」

 それは、かつての国民的有名プロレスラーのモノマネであり、妙にクオリティーが高い辺り、なんとも腹立たしく思えた。そのプロレスラーの代名詞とも呼べる掛け声を引っ掛けたのであろう。1、2、3、ダー……というわけか。元気がどれだけあろうが、この状況ばかりは絶対に覆せない。

「えー、このルールは単純明快で実にシンプル。3つの数字を宣言した方はぁ――ゲームを抜けることができまぁぁす。あくまでも、その1ゲームに限定されますがぁ、問答無用でゲームから抜けることができるのですぅ」

 何度考えてみても、やはりネーミングセンスを疑ってしまうが、しかし名前とは裏腹に、どうやら【アントニオ】は強力な救済措置となっているようだ。

 やることは基本的に【数取りゲーム】だから、特定の数字を誰かが踏むまでが1ゲームとなるだろう。あまり考えたくはないことだが、1ゲームにつき必ず1人が死ぬことになる。ただし、リスクを犯してでも【アントニオ】を成立させてしまえば、そのゲームからは抜けることができる。これは、かなりの恩恵になるのではないだろうか。

「――これだけ。ルールはたったのこれだけになりますぅ。いいですかぁ? まとめますよぉ。まず、このゲームには【ナンバーキーパー】という存在がいて、その特別な存在だけが【デスナンバー】を決定することができますぅ。そして【ナンバーキーパー】はアベンジャーがやりますぅ。また、3つの数字を一度に宣言した方は【アントニオ】を成立させたとして、そのゲームから抜けることができますぅ。もっと複雑にしても良いのですがぁ、これくらいライトなほうが分かりやすいでしょう」
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