ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】

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 高速道路へと乗ると、やはり一般公道とは雰囲気が違う。何をそんなに急ぐのであろうか――そう思ってしまうほど、車線変更を繰り返しながら走る車がいたり、追越車線に入ったまま、延々と走り続ける車がいたりと、色々な意味で気を遣わねばならない状態だった。仕方がなく追越車線に入り、さすがに遅すぎる車を追い越し、そしてゆっくりと元の車線に戻る。この動作だけでも私はとても緊張してしまうというのに、他の人達はどんな神経をしているのだろうか。追い越しなどせず、ずっと左側の車線を走っていたいのであるが、そういう時に限って、極端に遅い車の後ろについてしまったりする。できることならば、高速道路は乗りたくないものだ。もちろん、便利であることは認めるが。

 夜ということもあり、途中で何度かパーキングに寄り、少しずつ知らない地名が出てくることで、自分が住んでいる街から確実に遠ざかっていることを実感する。また知っている地名が出始める頃には、もう地元もすぐそこであろう。

 基本的に高速道路は直線であり、しかも夜間ということもあり、ほとんど変わらない景色が続く。ようやく高速での運転も慣れてきたようで、考えごとをする余裕さえ出てきた。私はそもそもの原因――赤松朱里が、なぜ私にあんなビデオテープを送りつけてきたのかを考察してみる。

 まず、そもそも私と彼女はそこまで仲が良いわけではない。お互いに嫌いだったとか、そういうのではなくて、単純に関わらなかっただけである。もちろん、言葉を交わすことはあったし、同じクラスメイトとしての付き合いはあった。でも、学校が終わってからも一緒に遊ぶような仲ではなかった。むろん、お別れの際に連絡先を交換するような真似はしていない。そもそも、私は大人になって自立しており、親とも離れて暮らしている。それなのに、なぜ私の住所を知っているのだろうか。住所が分からなければ、ビデオテープを送りつけてくるなんてこともできないはず。彼女に住所を知られていると思うと、途端に不安になった。

 何よりも理解できないのは彼女の目的である。いきなりビデオテープを送りつけてきたかと思ったら、次のテープは地元の学校にあるとの指示が出た。私を学校に呼び出したいのか。だとしたら、なぜ。どんな理由で。

 案内看板に知っている地名が出始めた。カーナビのほうに目をやると、到着時間と現在の時刻が徐々にリンクし始めている。すなわち、もうすぐ到着ということである。
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