ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第三章 惨殺による惨殺【過去 高田富臣】

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 進まなければ、ビビっていると思われてしまうかもしれない。でも、進んだ先には何が待ち受けているのか分からない。なんとなく想像していたよりも、はるかにそこは恐ろしい空間だった。本能が警鐘を鳴らしているような気さえした。

 それでも高田は進む。高田と鏑木に挟まれている由美香と茜は気楽なもので、まだ喋る余裕があるみたいだ。自分達は守られて当たり前。危険なことは男がやって当たり前。気楽で羨ましい。

 懐中電灯の明かりを先のほうへと当てながら、ゆっくりと足を踏み出しては、また足を踏み出す。まるで木々に囲まれたトンネルのような場所を進むと、急に辺りが拓けた。まるで、これまでのトンネルがウェルカムゲートだったかのごとく。

「は、大したことないじゃん」 

 閉塞感から一気に解放されたおかげか、変に気が大きくなる高田。拓けた場所に出たといっても、辺りは鬱蒼とした木々に囲まれているし、ところどころに茂みがあるせいで見通しはそこまで良くはない。しかしながら、地面は踏み固められたような形になっており、随分と歩きやすそうだ。もちろん、気持ち的な意味合いもあるのだろうが。

「さて、ここからどこに向かおうか。変に迷っても困るしな」

 気が大きくなったついで、余裕のあるところを見せようとする。随分と拓けた場所に出たものの、基本的に道は一本道のようだ。ところどころに茂みがあるせいで、なおさらに一本道に見えるのかもしれない。

「今のところはただの森じゃない? もっと、怖いのかと思ってたんだけど」

 閉塞感から発生した開放感を、勘違いした人間は高田だけではなかった。由美香が辺りを見回しながら言う。

「だよな。そんな思ったより――」

 由美香のほうを振り向いて気づいてしまった。彼女の後ろにいたはずの茜と鏑木の姿がないことに。

「お、おい。鏑木達はどこ行った?」

 高田の言葉に振り返った由美香は「え、知らないんだけど」と漏らす。もちろん、高田だって、鏑木達がどこに行ったかなんて知らない。

 基本的――というか、どう考えても、ここまではずっと一本道だ。拓けた場所に出たところで、茂みがそこら辺に見えるだけで、やはり一本道だ。となると、鏑木達が高田達に気づかれぬように後退……つまり、ミノタウロスの森を後にした可能性が高い。いいや、もうひとつ可能性があるか――高田は奥の茂みが、一瞬だけ動いたのを見逃さなかった。まさか、隠れてこちらを驚かそうとでもしているのか。
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