ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】

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「おかげさまで……」

 私が答えると、大和田はすぐに私の持っている写真に気がついたようだ。

「それは?」

 と問うて、私の後ろから写真を覗き込む。

「これは――棚田沢中学校の集合写真か」

 ご丁寧に写真の下部にそう書いてあるのだ。私がわざわざ説明するまでもないだろう。それにしても、大和田のリアクションを見るに、どうやら彼がこれを用意したわけではないらしい。

「一体、これをどうやって?」

 手に入れたのか。大和田の言葉に続くはそれだろう。私は写真を大和田に手渡した。受け取った大和田は自然と後ろ側のメッセージに気づいたのか、目を丸くしていた。

「目が覚めたら私の枕元にあったの。ここ、鍵をかけるわけにはいかないだろうし、誰でも出入りできちゃいそうだから」

 駐在所の出入口に視線をやると、大和田は小さく溜め息をついて「性質上、ここで眠るのは危ないかもしれないな」と呟き落とした。もし、私の命が狙われているようであれば、確かにここは危険ではあるが――その辺りのことは、まだ不明な点が多い。何者からか悪意を向けられていることだけは、どうやら間違いないようだが。

「それにしても、この集合写真――映像に出てくる人物の半分くらいが写っていないな」

 大和田はそう言うと、私に写真を返してくれた。大和田の言葉を受けて、私は目で写っている人物を洗い流していく。

「ちょっと待って。あのビデオって再現映像みたいなものよね? それに映っている人物と、全く同じ顔をしている人間が、これに写っているっておかしくない?」

 私はふとした疑問を大和田にぶつけてみた。

 あれらのビデオテープは再現されている映像である可能性が高い。赤松朱里主観の場面は別にして、他の場面においては、明らかに第三者――カメラマンの存在があるからだ。

「こうは考えられない? この写真自体が、その役者達を使って作られたフェイク。つまりは、これもまた、当時の集合写真を再現したものにすぎないってこと」

 ビデオは当時を再現したような感じになっていた。それに合わせて、もしかすると写真もまた再現なのではないか。

「その証拠に――ほら、写っている担任らしき先生。俺達が会った先生とは別人だ」

 あの先生の、どこか幸薄そうな顔が浮かび上がる。一方、写真に写っているのは、どこか快活そうで笑顔の担任。時が経つにつれて人は変わるものだが、同一人物には見えなかった。人間の老いを加味して考えても、同じ人には見えない。
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