ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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最終章 幕引き【現在 七色七奈】

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「まぁ、ゆっくりしていけばいいのに――って言えるほど何かがあるわけじゃないし、気をつけて帰ってくれよ」

 西尾朱里が逮捕されたことにより、今後は私も警察に事情を訊かれる場面が出てくるだろう。ただ、今すぐに事情聴取を――なんてことにはならないと思われる。警察に連絡先は聞かれたものの、今のところスマホに着信はない。なんだか、忘れた頃になってから電話が鳴りそうな気がする。

「えぇ、もちろん。言われなくても安全運転で帰るわ。たまにでいいから、事件がどのように進展したのか連絡くらいはくださいね。いつ、私にお呼びがかかるかも分からないわけだし」

 そもそも、私に警察から声がかかるのだろうか。もし、彼女が罪に問われるとしたら、私に対してはどんな罪になるのか。私を殺すつもりだったら殺人未遂か。それよりも、実際に殺された人が多すぎて、私のところまで捜査が回ってこないような気がする。現在進行形で起きた事件は、私と西尾朱里の事件だけなのであるが、過去に起きた事件のほうが衝撃的で、また優先されることだろう。

「分かった。定期的に連絡はするよ。まぁ、大分前の事件ということになるから、捜査にはかなりの時間を要するだろうけどね。それでも、進展がある度に連絡を入れるようにする」

 現状、事件が確認できたのは、ビデオテープ内のお芝居だけだ。実際に当事者達が過去に存在して、同じくらいの時期に殺害されているとは限らない。私達が確認できているのは、湯川智昭が何者かに殺害されたという事実のみだ。これから、どのように事件が転がっていくのか、まるで予測することができない。

「そうしてもらえるとありがたいわ」

 拝借した機材から順番に車へと積み込むと、あっという間に駐在所は私が訪れた時と同じように殺風景な部屋へと戻った。初めてここを訪れたのは、第三者による通報があったからだった。あの時は、面倒なことをしてくれた人がいたものだ――なんて思いもしたが、今となっては私のことを通報してくれた人に感謝したい。そのおかげで私は大和田という心強い味方に会うことができたのだから。

 自分の荷物も車へと積み込むと、いよいよ車はパンパンになった。また数時間かけて自宅まで車を走らせなければいけないと思うと、少しばかりげんなりする。

「出掛けに茶でも飲んでいってくれ。大したお見送りはできないけどね」

 あらかたの片付けが終わるのを見計らったかのごとく、大和田がお茶を出してくれた。まだ有給は大いに残っているし、急いで帰る理由もない。
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