ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】

32

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 気は進まない。気は進まないが、本人に話を聞くのがもっとも手っ取り早い。話をするにしたって、ほんの数分程度であろう。自分に言い聞かせて大東に電話をかけた。

 意外なことに、数コール程度で大東が電話に出た。あいつなら、着信相手によっては無視くらいしそうなものなのに。

「あの、一里之だけど」

 不審そうな声と共に大東が電話に出た時点で、嫌な予感のようなものがあった。どうやら、それは的中してしまったらしい。名を名乗った途端、舌打ちで返事をされたのが良い証拠だ。

「――誰かと思えば一里之かよ。くそっ、出て損したじゃないか」

 相変わらず憎たらしいことを言ってくれる。察するに、そもそも大東は一里之の連絡先をスマホに登録していなかったらしい。知らない電話番号から電話がかかってきたから、とりあえず出てみたのであろう。

「あのさ、ちょっと聞きたいことがあってさ」

 こっちだって、話したくて話している相手ではないのだ。妙な敗北感を味わいつつ、しかし我慢して下手に出る一里之。それに対して、大東は偉そうに「なんだよ?」と一言。

「以前、仕事で袴田さんのお宅に伺ったことがあると思うんだけどさ、その時のことを教えてくれないか? お前が行った時、奥さんと会ったのか? 依頼そのものが袴田さんからのものではなかったって本当か?」

 なんにせよ、聞き出せるところは聞き出しておかないと。できる限り大東を刺激しないように、あくまで下手に出る一里之。正直、大東の立ち振る舞いに苛立ちのようなものは抱いていた。

「あぁ? どうしてそんなことを聞きたがるのか知らないが、お前に教えてやる義理は――」

「お前、殺したのか? 袴田さんの奥さんを」

 大東の反応は想定済み。だからこそ、あえてぶっ込んだ。こちらの状況は分からないだろうが、自分が疑われているというのは面白くないだろう。下手に出つつ、神経を逆撫でするような一言を発する。中々に自分も駆け引きが上手くなったものだ。

「はぁ? どうして見ず知らずの婆さんを殺さなきゃならないんだよ。あの時は警察にも話を訊かれたけど、正直に全部話したんだ。俺が訪問したら奥さんが出てきて――それで、依頼をした本人に確認を取ってもらったら、本人は本人で依頼なんてしてないって言い出す始末だ。家の中はもちろん、風呂場にさえ入ってないんだからよ。そのせいで丸々1日が潰れたし、次の日は会社経由で警察に呼び出されるしで大変だったんだからな」
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