ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【出題編】

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 山荘に戻ると、コトリは他の部屋の物色を始めたようだった。鼻歌が聞こえる。

 部屋の間取りは思っていた以上にシンプル。まず玄関から見えるのが談話室であり、左手のほうに食堂だったと思われるスペースがある。そのさらに奥にはキッチンの跡地があり、そこで昨日は冥が食事を作ったようだった。

 右手には――資料によると作業場があるようだ。その先には裏口があるらしい。2階は全て客室となっている。

「お嬢は何をしてんだか――」

 鯖洲は物音と共にコトリの鼻歌が聞こえるほうへと向かう。方向的に作業場があるという場所である。扉を壊す際に持ち出したハチェットも、この作業場から持ち出されたものなのであろう。

 鯖洲について作業場へと向かうと、コトリが作業場の中で鼻歌混じりに、据え付けてあった万力を眺めているところだった。ここが手放されてから、ずっと放置されているのだろうか。作業場には万力が2台に、大きめの木製テーブルが置いてあり、その上には、錆びてしまったカセットコンロまでもが置いてあった。そもそも作業場といっても、ここは何をする場所だったのか。こんなスペースが山荘の中にあるのならば、薪割り小屋なんて必要なかったのではないか――とはあえて言わないでおいた。

「あら、一里之君。ちょっと教えてくださる?」

 コトリはそう言いながら、万力のレバーを回そうとする。しかし錆び付いているのかびくともしない。

「これは、どのようにして使われるものなの? 主にどんな目的で?」

 万力の用途といえば、資材などを挟んで固定するくらいしかないように思える。少なくとも、一里之が知っている用途はそれだけだった。

「そこにものを挟んで固定するためのものだと俺は思うんですけど――」

 さりげなく鯖洲のほうへと視線を向けた。

「俺もそいつの使い方といったら、それくらいしか思いつかねぇな。まぁ、口を割らせるために、そこに指を挟んでよ、少しずつ潰すっていう拷問にも使えそうだな」

 なにその使い方。笑えない。一里之がドン引きしているのを尻目に、コトリは「なるほど、そういう使い方もあるのね」と、素直に受け取る。鯖洲のせいで、コトリの中で万力のイメージが汚された。

「お嬢様、拷問に使うなど、そんな野蛮な使い方はいたしません。純粋にものを挟んで固定するためのものでございます」

 いつの間にか背後に立っていた寺山が助け舟を出してくれた。鯖洲への対抗意識がどうかはさておいて、訂正してくれたことはありがたい。
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