151 / 391
ケース3 山奥の事故物件【出題編】
29
しおりを挟む
山荘に戻ると、コトリは他の部屋の物色を始めたようだった。鼻歌が聞こえる。
部屋の間取りは思っていた以上にシンプル。まず玄関から見えるのが談話室であり、左手のほうに食堂だったと思われるスペースがある。そのさらに奥にはキッチンの跡地があり、そこで昨日は冥が食事を作ったようだった。
右手には――資料によると作業場があるようだ。その先には裏口があるらしい。2階は全て客室となっている。
「お嬢は何をしてんだか――」
鯖洲は物音と共にコトリの鼻歌が聞こえるほうへと向かう。方向的に作業場があるという場所である。扉を壊す際に持ち出したハチェットも、この作業場から持ち出されたものなのであろう。
鯖洲について作業場へと向かうと、コトリが作業場の中で鼻歌混じりに、据え付けてあった万力を眺めているところだった。ここが手放されてから、ずっと放置されているのだろうか。作業場には万力が2台に、大きめの木製テーブルが置いてあり、その上には、錆びてしまったカセットコンロまでもが置いてあった。そもそも作業場といっても、ここは何をする場所だったのか。こんなスペースが山荘の中にあるのならば、薪割り小屋なんて必要なかったのではないか――とはあえて言わないでおいた。
「あら、一里之君。ちょっと教えてくださる?」
コトリはそう言いながら、万力のレバーを回そうとする。しかし錆び付いているのかびくともしない。
「これは、どのようにして使われるものなの? 主にどんな目的で?」
万力の用途といえば、資材などを挟んで固定するくらいしかないように思える。少なくとも、一里之が知っている用途はそれだけだった。
「そこにものを挟んで固定するためのものだと俺は思うんですけど――」
さりげなく鯖洲のほうへと視線を向けた。
「俺もそいつの使い方といったら、それくらいしか思いつかねぇな。まぁ、口を割らせるために、そこに指を挟んでよ、少しずつ潰すっていう拷問にも使えそうだな」
なにその使い方。笑えない。一里之がドン引きしているのを尻目に、コトリは「なるほど、そういう使い方もあるのね」と、素直に受け取る。鯖洲のせいで、コトリの中で万力のイメージが汚された。
「お嬢様、拷問に使うなど、そんな野蛮な使い方はいたしません。純粋にものを挟んで固定するためのものでございます」
いつの間にか背後に立っていた寺山が助け舟を出してくれた。鯖洲への対抗意識がどうかはさておいて、訂正してくれたことはありがたい。
部屋の間取りは思っていた以上にシンプル。まず玄関から見えるのが談話室であり、左手のほうに食堂だったと思われるスペースがある。そのさらに奥にはキッチンの跡地があり、そこで昨日は冥が食事を作ったようだった。
右手には――資料によると作業場があるようだ。その先には裏口があるらしい。2階は全て客室となっている。
「お嬢は何をしてんだか――」
鯖洲は物音と共にコトリの鼻歌が聞こえるほうへと向かう。方向的に作業場があるという場所である。扉を壊す際に持ち出したハチェットも、この作業場から持ち出されたものなのであろう。
鯖洲について作業場へと向かうと、コトリが作業場の中で鼻歌混じりに、据え付けてあった万力を眺めているところだった。ここが手放されてから、ずっと放置されているのだろうか。作業場には万力が2台に、大きめの木製テーブルが置いてあり、その上には、錆びてしまったカセットコンロまでもが置いてあった。そもそも作業場といっても、ここは何をする場所だったのか。こんなスペースが山荘の中にあるのならば、薪割り小屋なんて必要なかったのではないか――とはあえて言わないでおいた。
「あら、一里之君。ちょっと教えてくださる?」
コトリはそう言いながら、万力のレバーを回そうとする。しかし錆び付いているのかびくともしない。
「これは、どのようにして使われるものなの? 主にどんな目的で?」
万力の用途といえば、資材などを挟んで固定するくらいしかないように思える。少なくとも、一里之が知っている用途はそれだけだった。
「そこにものを挟んで固定するためのものだと俺は思うんですけど――」
さりげなく鯖洲のほうへと視線を向けた。
「俺もそいつの使い方といったら、それくらいしか思いつかねぇな。まぁ、口を割らせるために、そこに指を挟んでよ、少しずつ潰すっていう拷問にも使えそうだな」
なにその使い方。笑えない。一里之がドン引きしているのを尻目に、コトリは「なるほど、そういう使い方もあるのね」と、素直に受け取る。鯖洲のせいで、コトリの中で万力のイメージが汚された。
「お嬢様、拷問に使うなど、そんな野蛮な使い方はいたしません。純粋にものを挟んで固定するためのものでございます」
いつの間にか背後に立っていた寺山が助け舟を出してくれた。鯖洲への対抗意識がどうかはさておいて、訂正してくれたことはありがたい。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる