ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【解決編】

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「そ、それで――愛は一体誰に?」

 千早が次の言葉を紡がないせいか、愛の母親はさらに食い気味になって問うてくる。千早が次の言葉を口にできないのは、きっと母親のことを傷つけてしまうことが分かっているからであろう。しかし、愛の父親が犯人だとしたら、どうすればいいのだろうか。本人はすでに他界しているわけだし、すでに昔の事件だ。警察が捜査の結論を覆してまで動くとは思えない。

 千早は愛の母親の質問には答えず、小さな声で「失礼」とだけ漏らして立ち上がった。向かったのは、写真が飾られていた一角だった。

「この写真――少しだけ構図がおかしいように思えるんです。家族が3人で写った写真なのに、ご両親のどちらかが切れてしまっていたり、変に寄りすぎているような気がするんですよね」

 写真が飾られている一角には、様々な写真がある。愛が1人で写っている写真や、家族で写っている写真など――確かに、前に見た時に一里之も違和感を覚えていた。家族写真なのに、変に片側に寄ってしまっていたり、両親のどちらかの体が入りきっていなかったりするのだ。

「この構図は、おそらく写真を撮影した後に加工を施したから生じたものなんです。おそらく、写真は元々別の構図だった。加工をしたせいで、こんな不自然な構図になってしまったんです。つまり……」

 千早はちらりと仏壇のほうへと視線を向けてから、愛の母親のほうへと視線を戻した。愛の母親の顔色が悪いように見えるのは気のせいなのだろうか。

「ここには本来写っているべき、もう1人の家族がいた。――違いますか?」

 千早の推測に、分かりやすく目を泳がせる愛の母親。千早は小さく溜め息を漏らして続けた。

「確か、お父様は私の住んでいる地域出身でしたよね? そして、よく愛さんをそちらのほうに遊びに連れて行ったと」

 ずっとだんまりを決め込むにはいかないと考えたのであろう。愛の母親はやや困ったような顔で「はい、そうですけど」と答える。そこにすかさず追随する千早。

「そのお話をされた際、うっかり失言されたことにはお気づきですか? あの時、あなたは、お子さんのことを【娘達】と表現したんです。愛さんだけのことを指すのであれば、わざわざ【娘達】とは言いませんよね?」

 わずかな綻び。この家に残されていた手がかりから、千早は気づいたのであろう。すなわち――。

「はい……。あの子、愛には兄がいます」
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