ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

文字の大きさ
360 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

77

しおりを挟む
「あなたは事件の当事者であり、また窓辺野コトリさんを殺害した犯人でもあります。周囲の庇った方々……おそらくは、お父様やお母様になるのでしょうが、その方々にとって恐ろしいのは、都合良く事件のことを忘れ、それこそ自らのことを窓辺野コトリだと思い込んでしまった窓辺野あかりが、本来の記憶を取り戻してしまうこと。せっかく色々と手を回したというのに、本人が罪を犯してしまったことを思い出し、警察に出頭でもされたら堪ったものではありません。だから、あなたに会社での権限を与え、事故物件を与えるというお遊びにも付き合っていたのです」

 間髪入れずに返ってきた斑目の言葉に、妙に納得をしてしまうコトリ。事故物件に異常な執着を見せていたのは、今になって思えば防衛本能だったように思える。自らの心を保つためだとばかり思っていたが、実のところはそうではなかった。窓辺野あかりとして残っていた部分が、決して事件を風化させまいとしていたからなのかもしれない。

「でも、だからって殺すことは――」

「はい。その必要はないのかもしれませんが、それはご両親のけじめの取り方なのではないのでしょうか? とにもかくにも、一里之君の聞いた話だと、どうやらあなたはずっと監視下におかれていたみたいです。万が一にも記憶を取り戻してしまった場合に備えて。その監視役が誰なのかは、もう言うまでもありませんよね?」

 コトリの発言を遮るかのごとく、今度は千早が口を開いた。きっと、対面に座る2人だって、こんな話はしたくないのであろう。コトリを含め、誰もコーヒーに手をつけていなかった。こんな状況で嗜好品なんて飲めるもんじゃない。

「寺山だった……ってこと?」

 コトリが震える声で答えると、千早と斑目が頷いた。寺山はお抱えの運転手であり、屋敷にいる人間の中では、もっともコトリに近い存在だった。もちろん、年柄年中監視されていたわけではないのだろうが、確かに寺山のポジションであれば、コトリの変化を逐一チェックすることができるだろう。

「はい。本人に確認を取りたいところですが、今は接触しないほうがいいでしょう。とにかく、あなたは過去の事件から今の今まで、窓辺野コトリであり続けたんです。窓辺野コトリのまま過ごすのであれば――事件のことを投げ出し、これ以上関わらなければ、いつも通りの日常に戻れるかもしれません。ここは残念ですが、この辺りで手打ちにしませんか?」

 まさか、刑事という立場である斑目から、そんな提案をされてしまうとは思いも寄らなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私の優しいお父さん

有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。 少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。 昔、私に何があったんだろう。 お母さんは、どうしちゃったんだろう。 お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。 いつか、思い出す日が来るのかな。 思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。

後宮の下賜姫様

四宮 あか
ライト文芸
薬屋では、国試という国を挙げての祭りにちっともうまみがない。 商魂たくましい母方の血を強く譲り受けたリンメイは、得意の饅頭を使い金を稼ぐことを思いついた。 試験に悩み胃が痛む若者には胃腸にいい薬を練りこんだものを。 クマがひどい若者には、よく眠れる薬草を練りこんだものを。 饅頭を売るだけではなく、薬屋としてもちゃんとやれることはやったから、流石に文句のつけようもないでしょう。 これで、薬屋の跡取りは私で決まったな!と思ったときに。 リンメイのもとに、後宮に上がるようにお達しがきたからさぁ大変。好きな男を市井において、一年どうか待っていてとリンメイは後宮に入った。 今日から毎日20時更新します。 予約ミスで29話とんでおりましたすみません。

処理中です...