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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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「あなたは事件の当事者であり、また窓辺野コトリさんを殺害した犯人でもあります。周囲の庇った方々……おそらくは、お父様やお母様になるのでしょうが、その方々にとって恐ろしいのは、都合良く事件のことを忘れ、それこそ自らのことを窓辺野コトリだと思い込んでしまった窓辺野あかりが、本来の記憶を取り戻してしまうこと。せっかく色々と手を回したというのに、本人が罪を犯してしまったことを思い出し、警察に出頭でもされたら堪ったものではありません。だから、あなたに会社での権限を与え、事故物件を与えるというお遊びにも付き合っていたのです」
間髪入れずに返ってきた斑目の言葉に、妙に納得をしてしまうコトリ。事故物件に異常な執着を見せていたのは、今になって思えば防衛本能だったように思える。自らの心を保つためだとばかり思っていたが、実のところはそうではなかった。窓辺野あかりとして残っていた部分が、決して事件を風化させまいとしていたからなのかもしれない。
「でも、だからって殺すことは――」
「はい。その必要はないのかもしれませんが、それはご両親のけじめの取り方なのではないのでしょうか? とにもかくにも、一里之君の聞いた話だと、どうやらあなたはずっと監視下におかれていたみたいです。万が一にも記憶を取り戻してしまった場合に備えて。その監視役が誰なのかは、もう言うまでもありませんよね?」
コトリの発言を遮るかのごとく、今度は千早が口を開いた。きっと、対面に座る2人だって、こんな話はしたくないのであろう。コトリを含め、誰もコーヒーに手をつけていなかった。こんな状況で嗜好品なんて飲めるもんじゃない。
「寺山だった……ってこと?」
コトリが震える声で答えると、千早と斑目が頷いた。寺山はお抱えの運転手であり、屋敷にいる人間の中では、もっともコトリに近い存在だった。もちろん、年柄年中監視されていたわけではないのだろうが、確かに寺山のポジションであれば、コトリの変化を逐一チェックすることができるだろう。
「はい。本人に確認を取りたいところですが、今は接触しないほうがいいでしょう。とにかく、あなたは過去の事件から今の今まで、窓辺野コトリであり続けたんです。窓辺野コトリのまま過ごすのであれば――事件のことを投げ出し、これ以上関わらなければ、いつも通りの日常に戻れるかもしれません。ここは残念ですが、この辺りで手打ちにしませんか?」
まさか、刑事という立場である斑目から、そんな提案をされてしまうとは思いも寄らなかった。
間髪入れずに返ってきた斑目の言葉に、妙に納得をしてしまうコトリ。事故物件に異常な執着を見せていたのは、今になって思えば防衛本能だったように思える。自らの心を保つためだとばかり思っていたが、実のところはそうではなかった。窓辺野あかりとして残っていた部分が、決して事件を風化させまいとしていたからなのかもしれない。
「でも、だからって殺すことは――」
「はい。その必要はないのかもしれませんが、それはご両親のけじめの取り方なのではないのでしょうか? とにもかくにも、一里之君の聞いた話だと、どうやらあなたはずっと監視下におかれていたみたいです。万が一にも記憶を取り戻してしまった場合に備えて。その監視役が誰なのかは、もう言うまでもありませんよね?」
コトリの発言を遮るかのごとく、今度は千早が口を開いた。きっと、対面に座る2人だって、こんな話はしたくないのであろう。コトリを含め、誰もコーヒーに手をつけていなかった。こんな状況で嗜好品なんて飲めるもんじゃない。
「寺山だった……ってこと?」
コトリが震える声で答えると、千早と斑目が頷いた。寺山はお抱えの運転手であり、屋敷にいる人間の中では、もっともコトリに近い存在だった。もちろん、年柄年中監視されていたわけではないのだろうが、確かに寺山のポジションであれば、コトリの変化を逐一チェックすることができるだろう。
「はい。本人に確認を取りたいところですが、今は接触しないほうがいいでしょう。とにかく、あなたは過去の事件から今の今まで、窓辺野コトリであり続けたんです。窓辺野コトリのまま過ごすのであれば――事件のことを投げ出し、これ以上関わらなければ、いつも通りの日常に戻れるかもしれません。ここは残念ですが、この辺りで手打ちにしませんか?」
まさか、刑事という立場である斑目から、そんな提案をされてしまうとは思いも寄らなかった。
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