ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 何がどうおかしいのか。そもそも、一里之のところに何をしに向かったのであろうか。コトリが返事をせずにいると、さらに鯖洲は続ける。

「あのよ、さっき組の方から連絡があってよ、どうやら事務所にもよその組からのカチコミがあったらしいんだよ。でもって、出先の俺も狙われてるみたいだから気をつけろってよ」

 鯖洲の口から出た聞きなれない言葉。思わず「カチコミって?」と聞き返す。

「あぁ、あれだ。簡単に言うと討ち入りだよ。他の組がうちのことを気に入らねぇから、討ち入りしてボコにしてやろうってやつだ。でもって、外に出てた俺のところにも鉄砲玉……ようは、ヒットマンみたいなのが来たわけだ」

 ヒットマン。そんな人物いただろうか。思い当たるのは、おそらくはあの男しかいない。コトリがそれを答える前に、鯖洲が続けた。普段からそうだが、今日はいつにも増してせっかちのようだ。

「多分、あのファミレスでお嬢を襲ったように見えた男。あいつ、元々俺狙いのヒットマンだったんだろうな。あの時、お嬢の命が狙われているかもしれないなんて話を聞いてたから、自然とそう思い込んでたけどよ、あれはたまたま、俺を狙ったヒットマンが、そう見えただけみたいだな」

 頭がこんがらがってきた。ファミレスの駐車場に姿を現した男は、コトリのことを狙って現れた男なのではないのか。それを庇って鯖洲が怪我をしたわけであるが――実のところ、最初から鯖洲が狙いだったということか。

「それによ、あれ以来襲撃らしい襲撃が全く無ぇんだよ。連中からすれば、お嬢が誰と行動しているかなんて分からねぇだろうし、救急車に同乗したら、普通は病院にいると思うだろ? 玄界灘が警戒してくれていたが、病院内にそれらしき気配はない。実際に玄界灘が周辺を調べてくれたんだがよ、面白いほどに妙な気配はないみたいなんだよ。で、玄界灘はなんか引っかかることがあったみたいで、一里之に会いに行ったみたいだ」

 ここにいたるまで、コトリ達は目に見えない脅威を恐れていた。いつその脅威が牙を剥くか分からない。だから慎重に動かねばならなかった。しかし、それは前情報がもたらしたものだったというのか。そこにたまたま、鯖洲の組を狙う者が介入したなんて、なんたる偶然だろうか。

「それって、実際のところ私は命なんて狙われていないということかしら?」

 落ち着け。自分に言い聞かせる。いいや、口調が元に戻りつつあるから、それなりに落ち着いてはいるのだろう。
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