ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 そんなことを刑事という立場の人間が言ってもいいのだろうか。ただ、そこにはコトリに対する気遣いが間違いなくあった。

「正直なところ、情報の出どころが不明確ですから、そもそもそこを議論するのも妙な話だと思います。今はただ、事情を知っているであろう人間から、嘘偽りのない情報を聞き出す。それに尽きるのではないでしょうか?」

 冥が言うと、斑目がかすかに笑みを浮かべて「本当の意味で振り出しに戻るわけですね」と漏らした。明らかになったいくつかの事実は覆せないが、解釈の仕方は色々あるかもしれない。

「ってことだからよ、お嬢も一度元に戻ろうや。お嬢が誰だろうと、俺の中じゃお嬢はお嬢なんだよ。しんみりされると気持ちが悪いからよ、頭切り替えとけよ」

 鯖洲の言葉にコトリはただ頷くことしかできなかった。認めなければならない部分は認めるべきだろう。でも、そこばかりを見つめていては、本来見えるべきものが見えなくなるかもしれない。無理な話かもしれないが、あまり引きずらないほうがいいのかもしれない。

 車を走らせることしばらく。鯖洲御用達であろう駐車場に到着。慣れた感じで車を駐車させると「ほら、到着だぞ」と鯖洲。それぞれ車を降りる。

 父の葬儀に関しては、屋敷と会社の人間に任せたはずだから、母は手が空いてるだろう。ただ、たかだか自分の親に会うだけなのに、どうしてこうも緊張するのか。普段から顔を良く合わせるし、昨日まではごく当たり前のように会話を交わしていたというのに。

 屋敷に到着するまでの間、コトリは必死に考えていた。こうなってしまった今、どんな顔をして母に会えばいいのだろうか。そして、どこから切り出したらいいのだろう。

 屋敷は出た時と変わらず静まり返っていた。もし母がいるとすれば、まず間違いなく自室であろう。そして、母の自室の場所を知っているのは現状でコトリしかいない。

「お母様ー!」

 エントランスはよく声が通る。だから、呼び掛ければ返事があるかもしれないと考えたが、しかし返事などない。やはり、直接部屋まで向かわねばならないのか。

「こっちですわ。ついてきて」

 1人だったら、怖くて母の自室まで向かえなかったのかもしれない。鯖洲や冥はもちろんのこと、斑目と千早の存在も心強い。

 コトリを先頭にして大階段をのぼると左に曲がり、回廊となっている部分を進んで右に折れる。真っ直ぐ進むと母の自室だ。
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