73 / 231
駆けよペーパードライバー【午後3時〜午後4時】
8
しおりを挟む
【午後3時30分 春日士郎 住宅街界隈】
本人は強がっていただけで、かなり体調が悪かったらしい。休んでいた陸士長が目を覚ました時には午後3時を回っていた。学校で死亡者が出たとのアナウンスから、かなりの時間が経過していたが、しかし春日達は学校へと向けて出発することになった。
荷物になって仕方がないため、春日は公民館に自分の物資である食酢を置いて行くことにした。春日自身のショルダーバッグは燃えてしまったし、ずっと水落に持たせておくのも申し訳ないと思ったからだ。ちなみに三人の食糧はひとつのショルダーバッグに集め、代表して水落が担ぐことになった。元より公民館を拠点とするつもりであるし、不要な荷物は持たないほうが良いだろうとの結論に達したのだ。もちろん、SGTだけはしっかりとそれぞれが所持している。
どこに罠が仕掛けられているのかは分からないが、必ず罠が仕掛けられているところには【トラッペ君】があることは確実である。また、今のところ全て目視で確認できている。それを踏まえ、三人で充分に辺りを警戒しながら、春日達は住宅街らしきところをゆっくりと進んでいた。
「地図を見た感じだと、このまま北上を続ければ良かったように見えたが――」
そう呟いた陸士長は、小さく「痛っ」と呟いて下腹部をおさえた。相変わらず体調不良は続いているらしい。
「大丈夫か? 少し休憩したほうがいいのなら――」
「さっき充分休ませてもらったし、一時的なものだから大丈夫だ」
春日の言葉をさえぎる陸士長だが、しかしその顔色は悪い。病院でも診療所でも構わないから、薬を調達できれはいいのだが。
「春日さん……。あれ」
ふと水落が立ち止まる。いよいよ【トラッペ君】を見つけたのだろうか。水落が指差した先へと視線を移すと、遥か前方に人影らしきものが見えた。ぱっと見た限り、二人組のようだ。とっさの反応なのか陸士長がライフル銃のレプリカを構える。
「おーい! 怪我人がいるんです! 助けて下さぁぁぁぁい!」
あちらもこちらの存在に気づいているのだろう。声を張り上げながら、手を振ってくる。手を振り返すと、銃をおろせと言わんばかりのジェスチャーを見せる春日。陸士長がライフルをおろしたのを確認してから口を開く。
「行こう。なんだか困っているようだ」
辺りを警戒しつつも、春日達は人影のほうに向かって歩き出す。あちらも春日達のほうに向かって歩き出したようだった。人影が近づくにつれて、二人組の一人は学ラン姿であることに気づく。もう一人はツナギを着ていた。どうやら、怪我をしたのはツナギを着ている男のほうで、学ランの男が肩を貸してやっているらしい。
本人は強がっていただけで、かなり体調が悪かったらしい。休んでいた陸士長が目を覚ました時には午後3時を回っていた。学校で死亡者が出たとのアナウンスから、かなりの時間が経過していたが、しかし春日達は学校へと向けて出発することになった。
荷物になって仕方がないため、春日は公民館に自分の物資である食酢を置いて行くことにした。春日自身のショルダーバッグは燃えてしまったし、ずっと水落に持たせておくのも申し訳ないと思ったからだ。ちなみに三人の食糧はひとつのショルダーバッグに集め、代表して水落が担ぐことになった。元より公民館を拠点とするつもりであるし、不要な荷物は持たないほうが良いだろうとの結論に達したのだ。もちろん、SGTだけはしっかりとそれぞれが所持している。
どこに罠が仕掛けられているのかは分からないが、必ず罠が仕掛けられているところには【トラッペ君】があることは確実である。また、今のところ全て目視で確認できている。それを踏まえ、三人で充分に辺りを警戒しながら、春日達は住宅街らしきところをゆっくりと進んでいた。
「地図を見た感じだと、このまま北上を続ければ良かったように見えたが――」
そう呟いた陸士長は、小さく「痛っ」と呟いて下腹部をおさえた。相変わらず体調不良は続いているらしい。
「大丈夫か? 少し休憩したほうがいいのなら――」
「さっき充分休ませてもらったし、一時的なものだから大丈夫だ」
春日の言葉をさえぎる陸士長だが、しかしその顔色は悪い。病院でも診療所でも構わないから、薬を調達できれはいいのだが。
「春日さん……。あれ」
ふと水落が立ち止まる。いよいよ【トラッペ君】を見つけたのだろうか。水落が指差した先へと視線を移すと、遥か前方に人影らしきものが見えた。ぱっと見た限り、二人組のようだ。とっさの反応なのか陸士長がライフル銃のレプリカを構える。
「おーい! 怪我人がいるんです! 助けて下さぁぁぁぁい!」
あちらもこちらの存在に気づいているのだろう。声を張り上げながら、手を振ってくる。手を振り返すと、銃をおろせと言わんばかりのジェスチャーを見せる春日。陸士長がライフルをおろしたのを確認してから口を開く。
「行こう。なんだか困っているようだ」
辺りを警戒しつつも、春日達は人影のほうに向かって歩き出す。あちらも春日達のほうに向かって歩き出したようだった。人影が近づくにつれて、二人組の一人は学ラン姿であることに気づく。もう一人はツナギを着ていた。どうやら、怪我をしたのはツナギを着ている男のほうで、学ランの男が肩を貸してやっているらしい。
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる