BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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動き出した狂気の果てに【午後7時〜午後8時】

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 実に異様で、そしてアンバランスだった。OL風の格好をしているが、服装のいたるところに赤のまだら模様が施されている。それが返り血であることに気づいたのは、笑みを浮かべた彼女の顔を見た瞬間のことだった。ぬぐった形跡があるものの、顔にも返り血がついていた。もしかすると――磯部のものなのかもしれない。なによりも目を引いたのは、彼女の身長に似合わぬ大振りのナタだった。街灯の明かりに照らされて黒光りし、そして鮮血をしたたらせる大きなナタ。

「みーつけたぁ」

 どうやら、磯部はこのOL風の女に背後から襲われてしまったらしい。辺りが真っ暗で、街灯の明かりだけが頼りになるような状況だからこそ、彼女の接近に気づかなかったのかもしれない。

「なんか――こいつ、やばい」

 それが普通ではないことは明らかだった。なんの前触れもなく姿を現し、そして磯部に斬りかかったのだ。地面にうつ伏せに倒れた磯部はぴくりとも動かず、ぱっくりと割れた背中の傷は、女のナタがどれだけの威力なのかを物語っている。

「ねぇ? 誰が犯人だか分かった?」

 女はニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながら聞いてくる。それと同時に暗闇の中にアナウンスが流れた。アナウンスが流れている間、女は微動だにせず、聞き耳を立てているようだった。流れたアナウンスはもちろん、磯部の死を知らせるものだった。

「――これでまた、新しいヒントがひとつ。早く誰かぁ、犯人を特定してくれないかしらぁ? それともまだ足りない? ヒントが足りないかな?」

 急に可愛い子ぶった口調になる女の姿に寒気がした。もしかしてこの人は、死者のヒントが他の参加者に勝手に転送されることを利用して、誰かが謎を解くことを望んでいるのではないか。もしそのために人を殺して回っているのだとすれば、明らかに頭がおかしい。

「ここはね――死が特別な世界なの。誰かが死ねば、どこにいても真相に迫るヒントを平等に得ることができる。それに、もし犯人役が死んだら、その時点で生き残った人間は解放される。だから、死は特別。とっても特別なこと。君達もみんなのために死んどく?」

 ナタ女が一歩踏み出すと、村山と共に真子も後退りする。磯部が境界線を越える恐れは、ナタ女の登場でなくなった。けれども、一難去ってはまた一難。磯部という脅威を力づくでねじ伏せたナタ女が、新たなる脅威として立ちはだかる。まだこちらに危害を加えようとしない分、磯部のほうがマシだったのかもしれない。
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