巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

文字の大きさ
1 / 95
プロローグ

【プロローグ】1

しおりを挟む
 薄暗い店内には小さく洋楽のナンバーが流され、お世辞にも仕切りとは呼べないような低い衝立ついたてで仕切られたボックス席では、数名単位のグループがそれを当然のように楽しんでいた。

 当然、クラブという名目なのだから酒も出てくるが、どうやら睨んだ通り、この店では酒よりも中毒性と快楽性の強いものを出すようだ。ざっと辺りを見回す限り、いぶした粉末をストローにて吸引するやり方。キメた人間の反応を見ると、アッパー系だろう。

 隣のボックス席では、店が満員御礼状態だというのに、男女が服を脱ぎ出し、性交渉まがいの行為が始まった。しかも複数人でだ。

「あ、あのぅ……。私、こういう店は苦手かもしれないんだけどぉ」

 黒髪のロングにやや露出の高いキャミソール。小柄でありながらスラリと伸びた長い足は、ショートパンツにより脚線美を更に際立たせる。少しは派手めな格好をしておけとは言われたが、ちょっとばかり度が過ぎたようだ。案の定、今日会ったばかりのチャラチャラした男が、さきほどからすきあらばスキンシップを図ってきている。

「大丈夫だって。これをキメちまえばすぐに気持ち良くなるからさ」

 カウンターから別の男が戻ってくる。男はアルミホイルの上に乗った粉末状のものをライターであぶると、それを彼女の前へと置いた。同じボックスに座った男達が、それぞれ彼女の胸元へ、彼女の足へ、彼女の顔へと視線をやり、ニヤニヤとしている。

「でもぉ、これっていけないクスリだよねぇ。警察にばれたら大変なんじゃないの?」

 彼女は手渡されたストローを手に、あえて少し怯えているかのように表情をかげらせた。

「心配いらないよ。警察だってこんな郊外のクラブまでこないって。それよりも、騙されたと思ってキメてみろよ。これ、凄ぇから」

 ストローを手に戸惑っている――ように振る舞う彼女に、男達は期待をはらんだようないやらしい目を向けてくる。隣のボックス席からは露骨な喘ぎ声が漏れ初めていた。どうせ同じようなことをする算段でいるのであろう。

 彼女はストローをテーブルに置くと、黒髪の下に隠して耳にかけていたインカムのマイクに呟いた。

「間違いなかったよ。やっぱりここ、違法ドラッグの密売店みたい」

 彼女が呟くとインカムの向こう側からノイズ混じりで「了解」と返事があり、勢い良く入り口の扉が開け放たれた。一斉に店内の意識が入り口のほうに向かう最中、スーツ姿の男二人が飛び込んでくる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

7月は男子校の探偵少女

金時るるの
ミステリー
孤児院暮らしから一転、女であるにも関わらずなぜか全寮制の名門男子校に入学する事になったユーリ。 性別を隠しながらも初めての学園生活を満喫していたのもつかの間、とある出来事をきっかけに、ルームメイトに目を付けられて、厄介ごとを押し付けられる。 顔の塗りつぶされた肖像画。 完成しない彫刻作品。 ユーリが遭遇する謎の数々とその真相とは。 19世紀末。ヨーロッパのとある国を舞台にした日常系ミステリー。 (タイトルに※マークのついているエピソードは他キャラ視点です)

処理中です...