巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

文字の大きさ
6 / 95
プロローグ

6

しおりを挟む
 雅が報告をした直後のことだった。勢いよく店の奥の扉が開き、部屋の中からアタッシュケースを大事そうに抱えたスーツ姿の男が飛び出してくる。初老のスーツの男だった。店の奥の別室から飛び出したことや、慌ただしく裏口に向かう足取りから、この店の関係者――大方オーナーかそこらなのであろう。

 オーナーらしき男の手には、黒光りする銃口。その気配を察したのか、先に裏口の方へと回っていた眼鏡の優男……桂が裏口から店内へと飛び込んでくる。

 突如として立ちはだかった桂に驚いたのか、オーナーらしき男は迷わず桂に銃口を向ける。しかし、桂のほうが明らかに早かった。体はもやしみたいに細いのに、床を蹴る度にみるみる加速をし、オーナーらしき男が銃口を桂に向けた瞬間には、すでに桂自身がその銃身を掴んでいたのだった。オーナーらしき男が銃口を向けるという動作と、桂が銃身を掴むという動作を同時に見せられたような気がするほど、桂は速かった。

 銃身を掴んでしまえばこちらのものといわんばかりに、わざわざ「とぅっ!」とのかけ声と共にハイキックで拳銃を蹴り落とす桂。安全装置が解除されているというのに暴発が怖くないのだろうか。

 蹴られた勢いで、その場に膝をつくオーナーらしき男。その姿を見て、桂はようやくホルスターから自分の拳銃を抜く。牽制の意味合いが強いのだろうが、しかし雅は見逃さなかった。オーナーらしき男がズボンの裾から小型の拳銃を取り出した場面を。

「かっちょん!」

 思わず彼のあだ名を呼んだが、しかしすでに銃口は桂へと向けられていた。けれども、それと同時に桂の拳銃もまた、オーナーらしき男のほうに向けられていた。間髪入れずに銃声がとどろき、時間差でオーナーらしき男のほうが倒れた。桂がここまで大胆なことをするのは珍しかった。田之上じゃあるまいし。

「かの有名などこかの課では、拳銃に模擬弾を詰めるのが通例とか……。くくくくくくくっ、運が良かったねぇ。僕がたまたまそれに興味を抱いてさぁ」

 拳銃をホルスターにしまいつつ、桂が不気味に笑い声を上げる。正直なところ、田之上よりも桂のほうが雅は苦手だった。

「まぁ、当たりどころが悪かったら死んでたけどさぁ。なかなか当たらないよねぇ」

 桂の独り言と同時に、完全武装をした機動隊が突入してきた。もう鎮圧したというのに、どうしてこうもわざとらしいことをしなければならないのだろうか。手柄を横取りするために必死な一課の方々に、もはや雅達は苦笑いしかできなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

7月は男子校の探偵少女

金時るるの
ミステリー
孤児院暮らしから一転、女であるにも関わらずなぜか全寮制の名門男子校に入学する事になったユーリ。 性別を隠しながらも初めての学園生活を満喫していたのもつかの間、とある出来事をきっかけに、ルームメイトに目を付けられて、厄介ごとを押し付けられる。 顔の塗りつぶされた肖像画。 完成しない彫刻作品。 ユーリが遭遇する謎の数々とその真相とは。 19世紀末。ヨーロッパのとある国を舞台にした日常系ミステリー。 (タイトルに※マークのついているエピソードは他キャラ視点です)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...